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乳房切除術

胸筋温存乳房切除術

ope_pic_00この手術法は、現在、わが国における乳がん手術の最も標準的な方法の一つです。乳房全部(皮膚を含む)を切除しますが、大胸筋や小胸筋を残して、必要に応じてセンチネルリンパ節生検、あるいは腋窩リンパ節郭清を行う方法です。

胸筋のうち、大胸筋のみを残す"Patey法"(鎖骨下リンパ節郭清も実施)、大胸筋と小胸筋をともに残す"Auchincloss法"、"Kodama法"などがあります。最近はPatey法やKodama法は行われず、Auchincloss法が標準的な術式となっています。

メリット

胸筋を残すため、胸筋を切除する手術(ハルステッド法)のように、手術した後にわきの下がへこむことがなく、皮膚に肋骨が浮き出ることもあまりありません。腕や肩の筋力低下や運動障害の程度も少なくなります。

デメリット

胸筋を切除する手術ほどではありませんが、腋窩リンパ節を郭清した場合は、腕のむくみを生じることがあります。腕や肩の運動障害を回復させるために、術後の十分なリハビリテーションが必要です(センチネルリンパ節生検で腋窩リンパ節郭清を省略できた場合は、このような障害が少なくなります)。また、胸筋への神経が保存されていないと、胸筋を残しても、後になって筋肉の萎縮が起こります。

乳房温存術

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乳房扇状部分切除術

ope_pic_01乳がんは乳管内を乳頭方向にはって進行することがあるため、下図のように、しこりとその周囲の正常乳腺組織を乳頭を中心にして扇型に切除し、必要に応じてセンチネルリンパ節生検、あるいは腋窩リンパ節郭清を行う方法です。

メリット

乳房温存手術の中で切除する範囲が広いので、比較的しこりが大きい場合でも取り残す可能性が少なくなります。乳房、わきの下とも切除範囲が乳房切除より小さくなるため、肩の運動障害が軽度ですみ、術後のリハビリテーションにより早く回復します。センチネルリンパ生検を行って腋窩リンパ節郭清が省略できれば、回復は一段と早くなります。

デメリット

乳房が小さい場合には、残った乳房に変形を生じるため、いろいろな工夫が必要となります。腋窩リンパ節を郭清した場合には、乳房切除術よりは軽度ですが、腕のむくみを生じることがあります。
また、残った乳房にがん細胞が取り残された可能性がある場合は、放射線照射か、再手術が必要となります。

乳房円状部分切除術

ope_pic_02切除する範囲が比較的小さいので、乳房が小さい人でも残った乳房の変形が少なくてすみます。腕や肩の運動障害が軽度で、術後のリハビリテーションにより早く回復します。

メリット

乳房温存手術の中で切除する範囲が広いので、比較的しこりが大きい場合でも取り残す可能性が少なくなります。乳房、わきの下とも切除範囲が乳房切除より小さくなるため、肩の運動障害が軽度ですみ、術後のリハビリテーションにより早く回復します。センチネルリンパ生検を行って腋窩リンパ節郭清が省略できれば、回復は一段と早くなります。

デメリット

しこりの大きさに比べて乳房が小さい場合には、残った乳房が変形することがあります。切除する範囲が小さいので、乳房扇状部分切除術に比べてがん細胞が取り残される可能性が高くなります。がんを残さないようにするためには、術前の画像診断をしっかり行い、少し大き目に切除する必要があります。腋窩リンパ節を郭清した場合には、腕のむくみを生じることがあります。

腫瘤摘出術

ope_pic_03しこりだけを取る手術です。
この手術法は、正常の乳腺をほとんど切除しないで、しこりのみを取り除き、必要に応じてセンチネルリンパ節生検、あるいは腋窩リンパ節郭清を行う方法です。通常は、ごく小さなしこりを取り除くときに行います。がんの場合はがんを取り残す可能性が大きいので、なるべく行わないようにしますが、がんの人に行った場合には、放射線照射が併用されます。

メリット

乳房が小さい場合でも、変形する可能性が少なくなります。

デメリット

切除する範囲が非常に小さいので、がん細胞を取り残すことを覚悟しなければなりません。腋窩リンパ節を郭清した場合には、腕のむくみを生じることがあります。

その他の手術

全乳房切除術

全乳腺切除

広く拡がった非浸潤がん(乳管内癌)、あるいは全く逆に乳房以外のところにまで既に転移している場合には、補足的に全乳房切除(乳房のみを切除する技術)を行うことや、乳頭・乳輪を残して全乳腺切除を行うこともあります。