乳がんの治療費について
昨今の乳がんの手術・治療では切除手術が第一選択肢とされいます。切除手術は女性にとっては辛い選択肢ですが、最小限の切除範囲で済むよう色々な工夫がされるようになってきました。
例えば、術前に抗がん剤でガンを小さくしてから、切除する範囲を小さくする治療法も普及してきています。
また、再発予防の放射線治療や抗がん剤治療を含めた治療も普及し、患者さんの選択肢も広がってきました。
手術後は5年から10年と長期にわたり、ホルモン療法を行うことも乳がん治療の特徴のひとつです。
ホルモン療法でも様々な薬が普及し、臨床試験も進んでいますが、全ての患者さんに有効なわけではないので、事前にホルモン療法が有効か否かを検査する必要があります。
また、乳がんの抗がん剤治療も治療を希望する全ての患者さんに有効なわけではありません。いずれも大体2~3割の患者さんが治療対象になっているのが現状です。
乳がんの治療選択肢のうち、「早期がん患者を対象の温存手術後に放射線治療・ホルモン療法を含む抗がん剤治療を併用する治療」、「進行がん患者を対象の術前抗がん剤治療後の手術、術後の放射線治療・ホルモン療法含む抗がん剤治療を併用する治療」の治療費の構造と概算費用、および自己負担額の目安について解説します。
- 表示している金額は、高額療養費制度を利用した場合とし、自己負担額は周術期などを除く1年目、2年目以降に分けて示しています。
- 70歳未満の一般的な所得を前提に治療費の計算をしています。差額ベッド代は含んでいません。
- 1年目の定期検査には、周術期治療や抗がん剤治療の後に行うもので、それぞれの治療中の検査費用は周術期治療費、抗がん剤治療費、ホルモン療法治療費に含まれています。
- これらの例は、全て5年間ホルモン療法を利用を想定しています。定期検査は別途費用が掛かりますのでご注意ください。
- 抗がん剤治療費は、患者さんの身長、体重、年齢や状態によって使用量が変わるため、治療費が多少増減します。予めご了承ください。
- 全ての治療費は病院や医師によって、誤差が生じます。必ず、かかりつけの病院にて最終的な治療費をご確認ください。
温存手術・術後再発予防抗がん剤・放射線治療費の目安
温存手術の前にセンチネルリンパ節生検を行います。
この検査によりセンチネルリンパ節への転移がないことが確認できれば、リンパ節の切除は不要になり、術後のリンパ浮腫の発生リスクも軽減することができます。
手術後、再発予防のために放射線照射、さらに抗がん剤治療を行います。
抗がん剤治療終了後、事前検査でホルモン療法が期待できると判断された場合、ホルモン療法を行います。
治療効果が期待できない場合、ホルモン療法は不要です。
1年目の自己負担額は周術期の9万円を含んだ53万円となります。
- 2種類のホルモン剤を組み合わせたホルモン療法を行う前提で計算しています。
- 抗がん剤治療、放射線治療、ホルモン療法を外来で行う前提で計算しています。
- 抗がん剤治療の開始当初は、副作用を観察するため、入院が必要な病院もあります。
手術前薬物療法・手術・術後放射線治療費の目安
やや進行した乳がんに対し、抗がん剤でガンを小さくし、その後切除、放射線照射、ホルモン療法を行う治療法です。
手術前の抗がん剤治療として、およそ6ヶ月間の術前治療を前提としています。
1年目の自己負担額は55万円、2年目以降は再発や転移がないことが前提で、ホルモン療法と定期検査のみになります。