あ行
- アジュバント療法 アジュバントとは、ラテン語で「助ける」という意味です。つまり、手術を主役とするとそれを補う治療のことです。術後補助療法という言い方が一般的です。術後補助療法の項目を参照してください。
- アロマターゼ阻害剤 アロマターゼというのは、エストロゲンを作る酵素の名称です。閉経前の人では卵巣でエストロゲンが作られますが、閉経後も副腎から分泌されたアンドロゲンというホルモンをもとにして脂肪組織でエストロゲンが作られるので、閉経後でも少量ながら体内にエストロゲンが存在します。この閉経後のエストロゲン合成に関わっている酵素がアロマターゼで、アロマターゼ阻害剤は、この酵素の働きをさまたげることにより、体内のエストロゲンの量を一層少なくして、乳がん細胞の発育、増殖を抑えます。アロマターゼ阻害剤は、閉経後の人に処方されます。商品名には「アフェマ」「アリミデックス」「アロマシン」などがあります。副作用は比較的軽く、吐き気、腹痛、食欲不振、疲労感、めまいなどが起こることがあります。まれに骨がもろくなるために骨折しやすくなることがあります。最近欧米で行われた臨床試験の結果、タモキシフェンより再発予防効果が高いことが確認されました。
- インフォームド・コンセント 日本語では「説明と同意」と訳されます。医師から十分な説明を受けて、その内容を患者が理解した上で同意・承諾することがインフォームド・コンセントです。医師がインフォームド・コンセントを得るために説明すべき事項には、病名と病状、第一選択として提案する治療方法(基本的には標準治療)、予想される治療の効果、治療に伴う危険性や副作用、その他の治療法と標準治療と比較した場合の長所と短所などがあります。インフォームド・コンセントは患者自身の意志で治療法を決める権利を尊重するものです。
- えくぼ症状 乳房にしこりがある場合、その周辺を指でつまむと、ちょうどえくぼのようにくぼみができることをいいます。外傷や手術後にも、このような皮膚のくぼみができることがありますが、しこりの近くにできた場合には、乳がんが疑われます。すべてのがんのしこりにえくぼ症状があるとはかぎりません。しこりが皮膚に近いところにあり、大きさが2センチぐらいになったときにできる確率が高いようです。
- エストロゲン 乳がんの発生、増殖と深く関わっている女性ホルモンです。卵胞ホルモンともいい、主に卵巣で作られ、わずかに副腎皮質でも作られています。女性が思春期になると卵巣でエストロゲンが作られるようになり、その結果乳房が膨らみ、生理が始まるといった第二次性徴が起こります。成熟した女性では、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が周期の中で調整されて、その結果月経の周期のメカニズムができています。閉経すると体内にあるエストロゲンの量は激減します。 エストロゲンは、乳がん細胞の表面にあるエストロゲンレセプター(ER)に作用して、細胞を増殖させます。乳がん細胞の増殖に関わるホルモンレセプターにはエストロゲンレセプター(ER)とプロゲステロンレセプター(PgR)がありますが、ERは強く乳がん細胞の増殖に関わっているので、ER陽性の乳がんではホルモン療法の効果が期待できます。乳がん細胞は始めはエストロゲンの作用を受けて増殖します(ホルモン依存症)が、進行するにしたがってエストロゲンの作用がなくても増殖できる(ホルモン非依存症)ように変化していきます。その結果、ホルモン療法の長期間の効果はあまり期待できなくなります。
- 悪性度 がんとしての性質(たち)の悪さ、つまり、増殖・転移・再発しやすさの程度を悪性度といいます。乳がんの悪性度を示す尺度としては、c-erbB-2というがん遺伝子、あるいはp53というがん抑制遺伝子などの異常、がん細胞の増殖のスピードの速さ、抗がん剤の効きにくさなどが考えられています。悪性度の評価方法の一つとして、グレード分類(組織学的異型度=正常からのへだたりの程度)があり、グレード1、2、3と数が多いほど悪性度が高いことを示したりもします。
- 異時性乳がん 一方の乳がん手術後にまたもう一方の乳房、あるいは同じ方の乳房に乳がんが発生することです。これは、乳がんが多中心的といって乳房内に複数がん細胞が芽生える性質があるためです。手術後は術側に注意を払うと同時にもう一方の乳房もよくチェックする必要があります。片方の乳房にがんができ、治療を受けた人は、初めて乳がんになる人の4~6倍もう一方が乳がんになる危険性があると言われています。
- 異所性乳がん 本来の乳腺(乳房)がある場所以外に発生する乳腺を、異所性乳腺と言い、そこにできる乳がんを、異所性乳がんと言います。顔、耳、頚部、背部などに発生すると報告されています。通常、人間の乳房は胸の上に水平に並んでいますが、時おり異なった場所、多くは脇の下や正常乳房の下内側に乳頭・乳輪あるいは乳腺組織が存在することがあり、それが副乳と呼ばれています。この副乳にできた乳がんは、副乳がんと呼ばれますが、副乳にできた乳がんと、それ以外にできた乳がんを一括して異所性乳がんと呼んでいます。異所性乳がんは、乳がん全体の0.4%程度を占め、その多く(2/3程)は脇の下にできるとされています。治療法は通常の乳がんと同様です。自己検診の際には、副乳にも触診が必要です。
- 遺伝性乳がん 遺伝子研究の進歩によって、乳がんの原因の一つとなる遺伝子が発見されています。乳がんでは一つの家系で乳がん患者が多く出る場合があります。そこで研究者がその家系の人々の遺伝子の解析をして、「第17染色体の長腕にあるBRCA1と2という遺伝子」に変異があると乳がんになる、ということを発見しました。この遺伝子があって発病すると、遺伝性乳がんということになります。この遺伝子を持つと、70歳までに80%の割合で乳がんになるそうです。また、この遺伝子をもっているかどうかを調べる事ができるようになりました。しかし、発病前にこの遺伝子診断をしてもその結果に対するサポート体制は現在のところは十分ではありません。また、発病後に遺伝子診断をして、この遺伝子を持った人が再発転移をする確率が高いかどうか、追跡調査をしている医療機関もあるようです。
- 一期再建 乳房切除手術に引き続いて乳房再建手術を行う方法で、同時再建ともいいます。1回の手術である程度の再建ができ、乳房がなくなってしまう経験をせずに済むというメリットがあります。乳頭と乳輪の再建は、改めて行うことが多いです。乳房切除による姿勢のアンバランスや変形を防止することができ、経費、精神的、肉体的な面で負担が軽いことがあげられます。反対に、1回の手術時間が長く体への負担が大きい、形成外科医と連携する場合は手術日程や時間の調整が難しいなどのデメリットもあります。また、局所再発の不安が大きい場合、せっかく再建した乳房をまた切除することになってしまっては困るので、二期再建が望ましいこともあります。どの方法がよいかは患者さんによって異なります。
- 永久組織標本 針生検や手術で採取した組織をホルマリンで十分に固定した標本です。病理医がより正確な診断を下すことができます。永久切片とも呼ばれるこの標本により、がんの正確な種類、広がり、悪性度、ホルモンレセプターや遺伝子検査も可能です。手術後の補助療法を決定する上でも重要な情報が得られます。
- 炎症性乳がん 乳房の皮膚がオレンジの皮のように赤く腫れる特殊な型の乳がんです。しこりはほとんどなく、がん細胞が乳房全体に広がり、皮下のリンパ管ががんでふさがれ、リンパ液が滞ります。外見は乳腺炎にそっくりですがマンモグラフィを撮ると特徴的な画像が現れるので、診断はつけやすいようです。一般的には予後が悪いタイプのがんです。発生頻度は1~4%とされています。乳腺炎の場合は化膿してたまっている膿を外に出さなければなりませんが、炎症性乳がんの場合はメスを入れることにより、血管の中のがん細胞が全身に飛び散る可能性があるので、化学療法やホルモン療法などの全身療法が治療の中心とされています。ただし、局所療法として、手術や放射線療法を行う場合もあります。
- 温熱療法(ハイパーサーミア) 約42.5℃で死滅するというがん細胞の弱点を突き、患部を42~43℃に温めることで、正常組織を守りながらがん細胞だけを致死させようとする治療法です。がん細胞は、正常組織より温まりやすくさめにくいという特質があり、同じように温めても、腫瘍の方が正常組織より高温となってがん細胞から先に死滅していきます。放射線療法や化学療法と併用し、それらの治療効果を高めることも期待されましたが、熱感や疼痛などの副作用も多く見られたため、世界的にはあまり行われなくなりました。
か行
- ガンマナイフ 放射線療法のひとつです。乳がんの場合は、脳転移(転移性脳腫瘍)に用いられる治療です。手術ではなく、ガンマ線で腫瘍をナイフで切り取るように治療することから名づけられました。21個のコバルト線源がヘルメットの中心で1点に集るよう設計された装置を頭蓋骨に固定して治療します。虫眼鏡に太陽の光を集めて黒い紙を焼くのと同じ原理です。1本1本の放射線のビームの力は弱いので、頭を貫通してくる時に病変部以外に与える影響を小さくできます。全脳照射など通常の放射線治療に比べ、治療期間が短くてすむ(1回の照射で終了)メリットがあります。3cm以下の病変部に適しています。治療手順としては、まず4本のピンでヘルメットを固定するフレームを装着し、次に病変部の広がりを把握するためX線検査をします。そして、照射範囲・量を決め、頭部をヘルメットに固定し、照射します。
- クラス がんの広がりや進行度を表すステージと混同されやすいのですが、クラス分類は細胞の顔つきの異型(正常からのへだたり)を正常の細胞からがん細胞まで5段階に分けた分類のことです。クラスⅠ・IIは、良性で、クラスVが、がん細胞ということになります。
- クラスI 異型細胞のないもの
- クラスII 異型細胞は存在するが、悪性ではないもの
- クラスIII 疑わしい細胞が存在するが、悪性と断定できない
- クラスIV 悪性細胞の可能性が強い
- クラスV 確実に悪性であるもの
- くりぬき手術 腫瘤摘出術のことで、正常な乳腺は殆ど切除せず、しこりのみを切り取る手術法です。良性の腫瘍の場合や、腫瘍の組織学的診断(生検)の目的で行われる術式です。
- グレード がん細胞の核や組織の異型度(正常からのへだたり具合)を示す分類です。乳がんとしてのたちの悪さ(転移・再発のしやすさ)を言い表し、細胞診の結果をグループ分けしたものです。グレード分類は1~3の3段階に分類されていて、大きな数字ほど悪性度が高い=正常な組織や細胞とのへだたりが大きいということになります。
- グレード1:正常からのへだたりが小さい、おとなしいがん細胞(悪性度が低い)
- グレード2:中間
- グレード3:正常からのへだたりが大きいがん細胞( 悪性度が高い)
- コバルト照射 放射線療法のひとつです。コバルト6という放射線同位元素から出るガンマ(γ)線を、5~8cmの距離から照射し、がん細胞を死滅させようとする放射線療法です。コバルト6のガンマ線はエネルギーが低いため、皮膚表面に近い病変の治療に適しています。乳房、及び胸壁の照射には、コバルト6のガンマ線、または4MV(メガボルト)程度のエネルギーのX線がよく用いられます。 近年、リニアック治療装置の普及により、コバルト遠隔治療装置(テレコバルト)の数は減少傾向にあります。
- コヒーシブシリコン 乳房再建に用いられる人工乳腺(インプラント)のひとつです。粘着力のあるコヒーシブジェルが入っており、形は半円形のラウンドタイプと、釣鐘型のアナトミカルタイプの2種類があります。コヒーシブジェルは最近良く使われるようになりました。粘着力があるため破れても漏れ出しにくいといわれています(まったく漏れないわけではありません)。コヒーシブシリコンのさわり心地はソフトシリコンよりもやや硬いです。
- コメドがん(面ぽうがん) 非浸潤性乳管がんの一種で、中心部が壊死するのが特徴です。石灰化を伴うことが多いです。乳管に沿って広がる傾向があって、温存手術を行った場合には取り残しがないか注意する必要があります。コメドがんが浸潤がんになった場合には、乳頭腺管がんになります。
- 化学療法 症状によって術前術後や、転移再発した場合に行われる抗がん剤による治療で、全身療法の一つです。抗がん剤を投与してがん細胞にダメージを与えることでがんを死滅させる療法ですが、正常な細胞にもダメージを与えてしまうためさまざまな副作用が現れます。薬には内服薬と注射薬(点滴など)の2種類があり、症状によって単独で薬を用いたり、いくつかの種類の薬を組み合わせて用いたりします。 補助療法で行う場合は、主としてリンパ節に転移がある場合や、内分泌療法(ホルモン療法)に効果が認められない場合、再発する可能性が高い場合などに行われます。
- 家族性乳がん ある家系では乳がん患者がたくさん出るということで、家族歴や血縁者のがんの発生率の調査が何回か行われました。日本では親、兄弟、子どものうち3名以上の乳がん発症家系または2名以上でそのうちのいずれかが4歳未満で乳がんになった場合、同時性・異時性両側乳がんになった場合、および、同時性、異時性多臓器重複がんになった場合のいずれかに当てはまる場合を家族性と定義しています。家族性乳がんは若年発症、両側乳がん、多臓器重複がんの頻度が高い、とされています。
- 核異型度 細胞は核と細胞質によってできていて、核の中には遺伝情報であるDNAが入っています。正常な細胞では、細胞が分裂する時にDNAが複製されてコピーを作り、2つに分かれて核分裂が起こり、細胞が分裂していきますので、核が異常に大きくなることはありません。しかし、がん細胞の核は正常な細胞より大きく、形が不整になり、粗大化したり不均等になるという特徴があり、正常細胞の核とどれだけ異なるかによって、そのがん細胞の悪性度を判断することができます。一般に、正常な細胞に比べて核が大きく、中身が詰まっていて顕微鏡で核が濃く見えます。形の変形が強いものほど悪性度が高くなります。がん細胞の顔つきなどとも言われます。
- 核分裂像 細胞は分裂によって増殖するので、がんの組織の中に核分裂をしている状態の細胞が多く見られるほど、細胞分裂の速度が速い、つまりがん細胞の増殖が速い(=悪性度が高い)ということになります。そのため、顕微鏡で見たある一定の範囲の中に、核分裂をしている状態の細胞がどのくらいあるか(核分裂像の数)が、がんの悪性度を測る指標の一つとなります。厳密に言えば、細胞分裂は核分裂と細胞質分裂の2過程からなりますが、細胞分裂像もほぼ同じことを意味します。
- 寛解 治療前にあった病変が見かけ上なくなった状態のことを言います。乳がんの治療効果判定などでは、すべての腫瘍が消失した状態が4週間以上続くことを完全寛解(complete response・CR)と言いますが、完全寛解=(イコール)がんが治ったことではありません。もちろん完全寛解が長く続けば治癒につながりますが、一時的であることが多いです。最近では、完全寛解とは訳さず、完全奏効と訳されるようになってきています。
- 管腔形成 細胞が集まってパイプや風船のように中が空洞の状態になることを管腔形成といい、細胞や組織の状態の特徴を表す表現で使用されます。乳頭腺管がんの組織の特徴として、乳頭状増殖および管腔形成があり、病理検査の結果などに「管腔形成がみられる」というコメントが書かれることがあります。管腔形成がされているほど、悪性度が低いと判断されます。
- 緩和ケア 痛みなどの身体的苦痛のコントロールに加えて、精神的、社会的、宗教的側面をも考慮した総合的な医療のことです。終末期だけではなく、それ以前の早い病期の患者に対してもがん病変の治療と同時に行われることもあります。患者自身とその家族ができる限り良好なQOLを実現できるよう、さまざまな専門化チームによってケアが行われます。積極的治療による副作用などの不快な症状を和らげることも緩和ケアです。
- 肝臓転移 がん細胞が、肝臓に転移することです。多くは自覚症状はありません。しかし転移が進行し、肝臓が肥大すると周りの組織を圧迫するために、腹部に痛みが出ることもあります。また、胆汁の通り道である胆道を圧迫すると黄疸が出ることもあります。診断は、腹部エコー、CTなどで行なわれます。治療は、全身薬物療法として、化学療法やホルモン療法が一般的です。また、動注療法といって、肝臓に行く動脈にカテーテルを入れて直接抗がん剤を送り込む治療を行なうこともあります。
- 胸郭 胸を囲む骨全体で囲まれるスペースを胸郭と呼びます。胸椎12個、肋骨12対、胸骨1個によって作られています。肺や心臓などの胸部の内臓を支え、保護するとともに、呼吸運動にも関わっています。
- 胸筋温存乳房切除術 乳房を全部切除する手術法のうち、最も標準的な術式です。非定型乳房切除術とも呼ばれます。乳房とリンパ節、胸筋上の組織を切除します。このうち、大胸筋と小胸筋を温存して腋窩リンパ節の郭清を行うものを「オーチンクロス法」といいます。また、大胸筋と小胸筋は温存しつつリンパ節の郭清を広く行う「児玉法」、大胸筋は温存するが小胸筋を切除し、腋窩・鎖骨下のリンパ節の郭清を広く行う「パティ(ペイティ)法」などがあります。
- 胸筋合併乳房切除術 乳房全部と大胸筋、小胸筋、及び付近のリンパ節(腋窩リンパ節と鎖骨下リンパ節)をすべて切除する手術法です。この方法を開発したハルステッドという外科医の名前を取ってハルステッド法とも呼ばれ、半世紀以上に渡って標準術式として世界中で行われていました。しかしながら、このように広範囲に切除しても必ずしも治療成績が向上しないことが判明し、現在では、乳がんが進行して胸筋にまで浸潤している場合などを除いて、殆ど行われなくなっています。
- 胸骨 胸の前側の真中にある、縦長の扁平な骨のことです。肋骨のうち上から7本目までが、この骨につながっています。
- 局所再発 乳がんの場合の局所再発とは、乳房温存術後の乳房内に再発したもの、乳房切除後の胸壁に再発したもの、健側の乳房内に再発したもの、乳房の周囲のリンパ節に再発したものなどをいいます。 乳房温存術後の乳房内局所再発を予防するために術後補助療法として放射線療法を行います。それでも、年間1%、5年間で5~1%程度は乳房内再発が起こると考えられています。しかし、乳房内再発の場合は、再切除可能な場合が多く生存率には影響しないと考えられています。
- 形成外科 外科系の診療科の一つで、主として機能回復とQOLの向上を目的とする専門外科です。組織の異常、変形や欠損などの疾患を治療対象とする「再建外科」と、疾患とは言えないが、自分がとても気にしている微妙な形を治療対象とする「美容外科」の二分野に大別されます。再建外科は「生まれつきの、またはけがやがんなどで変形したり失われた体の表面や骨の異常」を、機能の回復だけでなく、形も正常に近い状態に再建することで、QOLの向上を図ろうとするものです。特定の臓器に限らず、全身のあらゆる部位の異常や形態の変化が治療対象であるという特徴があります。乳がんの場合は、乳房再建術を形成外科が担当します。
- 血管内治療療 がん細胞は、自分の栄養補給のために動脈につながる血管を新たに生じさせることがあります。この栄養補給路(新生血管と呼びます)を閉じることにより、がん細胞を衰えさせる治療方法のことです。具体的には、局部麻酔を施し、足の付け根から血管に細い管を挿入して病巣部に薬などを注入します。副作用が少なく、外来治療も可能です。転移したがんやリウマチに対し有効な治療法といわれています。ただし、血管内治療を行える施設は少なく、自費診療扱いのため治療代は高くなっています。また、生存率の向上に結びついているかどうかも、まだわかっていません。施設によっては、動注療法のことを血管内治療と呼ぶ場合もあるようです。
- 血管内侵襲 切除したがん組織の中に含まれる血管の中にがん細胞が入り込んでいることを、血管内侵襲または静脈侵襲といい、がんが周囲組織のどこまで広がっているかを測る指標のひとつです。病理診断の結果では、「v」がプラスかマイナスか、あるいは0~3の数値で表されます。がん細胞は、その周囲に広がっていくだけでなく、リンパ液や血液に乗って全身に転移する可能性があるわけですが、血管内侵襲の有無によって、遠隔転移の可能性を予測する判断材料の一つとなります。ただし、血管内侵襲があるからといって、必ずしも遠隔転移しているわけではありません。
- 広背筋皮弁法 切除したがん組織の中に含まれる血管の中にがん細胞が入り込んでいることを、血管内侵襲または静脈侵襲といい、がんが周囲組織のどこまで広がっているかを測る指標のひとつです。病理診断の結果では、「v」がプラスかマイナスか、あるいは0~3の数値で表されます。がん細胞は、その周囲に広がっていくだけでなく、リンパ液や血液に乗って全身に転移する可能性があるわけですが、血管内侵襲の有無によって、遠隔転移の可能性を予測する判断材料の一つとなります。ただし、血管内侵襲があるからといって、必ずしも遠隔転移しているわけではありません。
- 抗エストロゲン剤 ホルモン療法では、もっとも標準的でよく使われる薬です。エストロゲンレセプター(ER)が陽性の乳がんの場合、第一選択(最初に処方される薬)として使われることが多いです。エストロゲンが乳がん細胞の表面にあるレセプター(ER)に結合すると乳がん細胞が増殖しますが、抗エストロゲン剤は先回りしてERに結合してしまい、エストロゲンが結合できないようにしてしまいます。そうなるとがん細胞の遺伝子が働かなくなって増殖が抑えられます。抗エストロゲン剤は、閉経状況を問わずに効果がありますが、閉経後のほうがより効果が大きいといわれています。大きく分けると2種類あり、タモキシフェン(商品名は「ノルバデックス」など)、トレミフェン(商品名は「フェアストン」)です。タモキシフェンは閉経前、閉経後いずれにも処方され、トレミフェンは閉経後のみ処方されます。飲み薬で1日1~2回毎日服用します。服用期間は手術後2~5年(最近では5年が主流になりつつあります)程度が多いですが、患者さんによって異なります。副作用は比較的軽く、無月経、月経異常、ほてり、吐き気、肝機能異常、若干の体重増加などがみられることがあります。また、タモキシフェンでは1人中1~2人の割合で子宮体がんが発生するリスクがあることが知られています。
- 抗がん剤 化学療法で用いられる薬のことです。種類は多数あり、内服薬・注射薬(点滴など)があります。通常2種類以上の薬剤を併用して投与する方法(多剤併用療法)が行われることが多いです。抗がん剤はがん細胞を死滅させる効果がありますが、同時に正常な細胞も攻撃してしまうため、さまざまな副作用が起きます。副作用には、吐き気、脱毛、口内炎、白血球減少、貧血、血小板減少、爪の変形・着色、生理不順、肝臓・腎臓の機能障害などがあります。抗がん剤はこのような副作用が起こることが避けられないため、事前に医師から詳しい説明を受けることが大切です。しかし吐き気や白血球減少などの副作用を軽減させるための薬も多数開発されています。また、副作用の多くは、投与が終了または中止することで回復に向かいます。
- 更年期障害 一般には、女性の閉経前後の時期を更年期と呼び、この時期に起こる様々な不調を更年期障害と呼びます。更年期障害には、ほてり、のぼせ、頭痛、肩こり、不眠、いらいらなどの症状があります。更年期障害は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌の変化によって引き起こされます。乳がんの治療でホルモン療法を行った場合は、体内の女性ホルモン環境が変ったり、自律神経の働きに異常をきたして、更年期の時期でなくても更年期障害に似た症状が出やすくなります。
- 硬がん 乳がんの種類のひとつです。全乳がんの4%が硬がんとされています。硬がんは血流やリンパ流に乗って他の部位に転移するのが、他のがんより比較的早いとされています。組織の特徴は腫瘍細胞成分が少なく、コラーゲン成分が多いとされています。マンモグラフィや超音波検査で硬がんと推定出来る場合もあり、又細胞診で判明することもあります。乳がんにおいては硬がんであるかどうかより、リンパ節に転移があるかどうかの方が生存率に大きく影響するという専門家もいます。
- 硬膜外麻酔 局所麻酔のひとつです。脊髄を守り、覆っているのが硬膜で、脊髄が必要以上に動いてしまわないようにするクッションの役割をするのが、硬膜外腔です。この2~5mmの空間に局所麻酔薬等を注入して、脊髄神経を一時的に遮断するのが、硬膜外麻酔です。硬膜外腔には、脂肪がつまっているので、スポンジに水をすい込ませるように薬を使用し、狙った部分にだけ麻酔をかけることができます。手術の際には全身麻酔と併用することが多いです。極細い管を硬膜外腔に留置し鎮痛薬を持続的に投与することで、術後の痛みを軽減させることができます。
- 高分化 腫瘍細胞がその発生した組織や器官の正常細胞に近ければ近いほど分化した腫瘍といいます。高分化がんとは、発生した組織の細胞(乳がんの場合は正常な乳腺組織の細胞)にきわめて類似しているものをいいます。高分化型のがんはもっともおとなしいタイプのがんに属します。 予後については、高分化型が低分化型より良好のことが多いといわれています。通常、がん組織では1種類の型のみがみられることはまれでそれぞれの型が混在しており、どの型がいちばん多く観察されるかでがんの悪性度が判定されます。
- 骨シンチ 骨シンチとは放射性医薬品を使う骨の核医学検査です。がんが骨に転移していないかを調べます。この検査に用いられる薬は放射線をだすラジオアイソトープ(RI)が含まれていて骨の代謝や反応が盛んな所に集まります。そのため、骨の腫瘍や骨の炎症、骨折の診断ができます。乳がんでは、骨転移が疑われる時や、骨転移の治療の経過を見るときに行います。 検査方法は、まず注射をし、約3時間ほどして骨に充分くすりが集まった頃に画像をとります。仰向けに寝て、2~4分で終わります。きれいな画像をとるために、検査前にトイレに行き膀胱を空っぽにして、検査中は動かないようにします。
- 骨髄移植 造血幹細胞移植の一種。造血幹細胞を骨髄から取るものです。
- 骨髄抑制 血液中の細胞には白血球、赤血球、血小板があり、骨の中心部分にある骨髄で造られます。 抗がん剤は細胞分裂が活発な組織に作用するため、細胞分裂が活発な組織である骨髄にも影響して血液を造る働きが低下し、白血球、赤血球、血小板ともに減少します。特に減少しやすいのは白血球です。これを骨髄抑制といいます。 白血球が減ると、細菌感染を引き起こしやすくなります。また、血小板が減ると出血しやすくなり、赤血球が減ると貧血になりやすいので、必ず血液検査をしながら化学療法を行います。副作用による弊害ができるだけ少なくなるように、人ごみでの感染を避けるなど生活面でさまざまな工夫をしたり、熱が出たときは感染予防のために抗生物質を、白血球の数がなかなか元にもどらないときは白血球を増やす薬(G-CSFなど)を投与したりします。 抗がん剤によって骨髄の機能が低下しても、投与が終われば血液は再び元の状態に戻ります。
- 骨転移 がん細胞が骨に転移することです。乳がんの遠隔転移では骨転移が最も多くみられます。症状の多くは痛みです。脊椎の転移が進行すると、痺れや麻痺が起きることもあります。麻痺はすぐに対処しないともどらなくなることがあるため、早期発見・早期治療(通常48時間以内)が必要となります。診断は、骨シンチ、単純X線、CT、MRIで行なわれます。骨シンチでは、全身の転移が一度に分かり、早期発見が可能とされていますが、擬陽性となることもあり、確定診断のためには、X線、CT、MRIが必要な場合があります。治療は、全身薬物療法として、ホルモン療法や化学療法、ビスフォスフォネートによる治療があり、局所に対しては、放射線による治療があります。放射線による治療は、多くの痛みの緩和に効果があります。まれに、病的骨折の心配がある場合など、金属プレートで固定するような手術が行なわれることもあります。
- 潰瘍 潰瘍といえば胃潰瘍を連想しますが、乳がんの場合、がんの進行が進むと、乳房表面の皮膚が赤くなり腫れてきて、最後には皮膚が崩れてしまうことがあります。がんが皮膚の下から顔を出してしまい、悪臭のある汁がじくじく出たり出血を起こしたりします。この状態を潰瘍といいます。潰瘍を作るのは良性の腫瘍の場合もありますが、乳がんの場合は潰瘍になる前に皮膚がひきつれたり、えくぼのようにへこんだ状態になることが多いようです。
さ行
- サイバーナイフ 放射線療法のひとつです。乳がんの場合は、脳転移(転移性脳腫瘍)に用いられる治療です。ロボットアームにリニアックというX線発生装置を取り付け、このロボットアームを病変部に合わせて動かすことにより位置を調整し、放射線を照射するものです。機械の方が動くため、患者側にはガンマナイフのようなフレームによる固定は不要です。このため分割照射を行うこともでき、これにより正常組織に与える障害を押えながら治療効果を上げることも可能です。また、頭蓋内の他に頚部・頚椎等の治療も可能です。病変が小さく数が少ない場合が適応となります。
- サンクト・ガレン(ザンクト・ガレン) サンクト・ガレンとはスイスの都市の名前です。ここで3年に1回(2003年からは2年に1回)世界中の乳がん治療の専門家が集まり、さまざまな臨床試験の結果を吟味して、術後補助療法の治療指針(ガイドライン)を作成して公表しています。この国際会議のことを、地名をとってサンクト・ガレンと呼ぶこともあります。ここで出される治療指針は、その時点での世界の標準治療とも言えるもので、日本の多くの専門医もこれに準じて術後補助療法の内容を決定しています。
- しこり 手で触ったときに感じるかたまりのことで、医学用語では腫瘤(しゅりゅう)といいます。乳房を触った時に他とは違う手触りのものが触れることがあります。乳がんの自覚症状のうち最も多いものですが、しこりがあっても乳がんであるケースは1割くらいで、約9割は乳腺症などの良性疾患といわれています。
触診によってしこりの形や固さ、周りの組織とのつながり具合などを診断し、良性か悪性かの判断材料としますが、触診だけで乳がんと診断するのは専門医でも難しく、超音波検査(エコー)やマンモグラフィ(乳腺のX線撮影)など他の検査も併せて行う必要があります。 - シリコンジェル 乳房再建に用いられる人工乳腺(インプラント)のひとつです。半分液体状の柔らかいシリコンジェルが入っており、形は半円形のラウンドタイプと釣鐘型のアナトミカルタイプの2種類があります。長い間の使用実績がありますが、1992年バッグから漏れ出た場合の発がん性等が問題となり米国で使用中止になりました。しかし、IRG(乳房インプラント調査室)は「シリコンジェルが女性の健康を害する危険性はない」と1998年に報告しています。
- ストロンチウム 放射線の一種であるストロンチウム(Sr-89)は、骨代謝の活発なところ、つまり骨転移部位に選択的に集まる性質があります。この特性を利用して、骨転移の痛みを抑えようとする新しい治療法のことです。ストロンチウムは、静脈注射で体内に注入します。体内から排泄されて血液中の濃度が下がれば繰り返し行うことができます。欧米では既に行われている治療法ですが、日本ではまだ認可されていません。
- セカンドオピニオン 直訳すると「第二の意見」であり、診断や治療方針に関する主治医以外の医師の意見のことです。一人の医師の診断と説明で納得できないときや治療法の決定に迷ったとき、セカンドオピニオンが役立ちます。アメリカではセカンドオピニオンを取るのが常識にまでなっていますが、日本ではあまり行われていませんでした。しかし日本でも徐々に広まってきています。セカンドオピニオンを取るときには、最初の医師からセカンドオピニオンをもらう医師あての紹介状を書いてもらったり、レントゲン写真などを病院から貸し出して持っていくこともできます。
- センチネルリンパ節 今まで、リンパ液はいろいろな方向に流れていると思われてきました。しかし、最近の研究により、一定方向の流れがあると考えられるようになりました。乳腺からのリンパ液が一番はじめにたどり着くリンパ節を見つけ、そこにがん細胞があるかないかを顕微鏡で見れば、リンパ液の流れに乗った転移があるかどうかを予想することができます。この、はじめのリンパ節のことを、センチネルリンパ節といいます。「見張り」という意味です。ここにがん細胞がなければ、そこから先のリンパ節に波及している可能性は低いと考えられます。
- センチネルリンパ節生検 センチネルリンパ節は、がん細胞が最初に転移する確率が高いリンパ節のことで,見張りリンパ節とも言います。このリンパ節を、色素や放射線同位元素を用いて特定し、摘出して転移の有無を調べることがセンチネルリンパ節生検です。
乳がんでは、取ったリンパ節に転移がなければ、他のリンパ節に転移している確率は低いと考えられるため、腋の下のリンパ節郭清を省略しても差し支えないと言われています。そうすることで、術後の腕のむくみなどの合併症の回避、入院期間の短縮など、術後の患者のQOLの向上におおいに貢献すると考えられています。最近は、脇の下のリンパ節が触診上触れない比較的早期の患者さんを対象に、手術中にセンチネルリンパ節生検を行い、転移がなければリンパ節郭清を行わない施設も増えてきています。 - ゾラデックス LH-RHアゴニスト製剤のひとつ。ゾラデックスは商品名。
- 再発 再発とは、一度治療した病気が再び起こることです。がんの再発は、治療後がん細胞が残っている場合、それらが増殖して、数ヵ月から数年を経て再び活動的になることをいいます。乳がんの再発は、再発する部位(場所)によって、(1)温存乳房や胸壁に起こる局所再発、(2)わきの下のリンパ節に起こる領域再発、そして(3)乳房から離れた器官や組織、例えば肺、骨、肝臓、脳に起こる遠隔(全身)再発(=転移)にわかれます。(1)~(3)は治療法がそれぞれ異なります。再発の発見のため、がん患者は初回の治療以後、数年にわたる検査や診察が必要です。さらに患者自身が自身の身体の変化(体重、痛みなど)を観察することも重要といえるでしょう。
- 細胞異型度 細胞の悪性度(細胞の顔つきの悪さ)を示す尺度の一つです。細胞の形態上の変化の度合いをいいます。細胞診で、細胞の顔つきの悪さに段階をつけたものをクラス分類と言います。クラスIは、まったく正常な細胞ですが、クラスIIでは、少し形の異なる細胞=異型細胞が見られます。しかし炎症などによっても異型が起こることがあり、正常細胞がなんらかの原因で少し異型したものと判断でき、クラスIとともに良性と判定することができます。クラスIII→VIは、異型の度合いが強くなっています。
- 細胞診 細胞を直接顕微鏡で見て正常細胞か悪性かを診断するものです。しこりに針を刺して吸い取った細胞や乳頭からの分泌物を染色した後、顕微鏡で細胞の形を検査し、細胞の変形の度合いを5段階(クラス分類)で評価します。比較的簡単なわりに信頼度が高いため、現在広く行われている方法です。これでクラスVという評価が出た場合は、原則として悪性(=乳がん)という診断が確定することになります。しかし、細胞診は、病変の一部の細胞を見て、その病変が良性か悪性かを推定することですので、正確に言うと確定診断ではありません。大抵の場合は触診や画像診断と併せて総合的に判断されます。
- 三次元照射 放射線療法の照射方法のひとつです。三次元的にさまざまな方向からがん病巣に放射線を照射し、集中的にがん病巣をねらい撃ちする方法です。がんのある場所にピンポイントで照射するため、通常の放射線療法では行えない大線量の照射が可能となり、効果的に治療が行えます。正常組織への放射線量は少ないため、正常組織へのダメージはたいへん少なくてすみます。
- 支持的治療(支持療法) 支持的治療とは、がんに伴う痛みなどの症状緩和、がん治療による副作用の軽減を目的とする医療のことです。根治が主目的の「積極的治療」(手術、化学療法、放射線治療)に対応して使われます。 がん治療ではどのようなタイミングであっても「積極的治療」と「支持的治療」のバランスが重視されるべきです。
- 視診 医師が患者の体を見て診察することを視診といいます。全身の状態や異常のある部分をよく観察します。乳房の場合は乳房の左右対称性、ひきつれやくぼみがないか、皮膚が赤くなったり、ぶつぶつができていないか、腫れてないか、乳首に陥没などの異常はないかなどを見ます。
- 腫瘍マーカー からだの中にあるがん細胞は、ある種のタンパク質や酵素などを分泌します。血液や尿の中にあるこの物質の量を測ることにより、からだの中のがんの存在を間接的に知ることができます。この特定の物質を、腫瘍マーカーと呼びます。血液検査などで簡単に検査できるため、腫瘍の進行や治療効果を知る目安として利用されていますが、この検査は限界があり万能ではありません。現在のところ早期がんに反応するマーカーはほとんどなく、逆にがんでなくても上がる場合もかなりありますので、過信は禁物です。
乳がんの主な腫瘍マーカーには、CEA、CA15-3、NCC-ST-439、BCA225、TPAがあります。? - 腫瘤摘出術 正常な乳腺は殆ど切除せず、しこりのみを切り取る手術法です。くりぬき手術ともいいます。良性の腫瘍の場合や、腫瘍の組織学的診断(生検)の目的で行われる術式です
- 充実腺管がん 浸潤がんの通常型の一つです。乳がん全体の約20パーセントと言われています。しこりの中に詰まったがんが、周囲を圧迫しながら増殖します。しこりの周りと正常細胞との境目は比較的はっきりしています。浸潤がんの通常型では、乳頭腺管がんと硬がんとの中間タイプです。
- 重粒子線治療 放射線療法のひとつです。重粒子線とは、粒子線の一種で、その中でも質量が大きい炭素などの原子を持った放射線を言います。
- 術後補助療法 乳がんの手術で完全にがんが取り切れたと考えられる場合でも、目に見えないようながん細胞が全身に残っている可能性があります。そのために、手術を補う治療を行う場合があります。それを術後補助療法といいます。術後補助療法には、ホルモン剤を使うホルモン療法と抗がん剤を使う化学療法、放射線療法があります。ホルモン療法や化学療法には、いろいろな薬剤の組み合わせがあり、患者の年齢、がんの性質、進行度合いに応じて、患者にとって最も適切な治療法が選ばれます。治療法の選択は、サンクト・ガレンの治療方針などに沿って決定されることが一般的です。
- 術前補助療法 手術前に行う抗がん剤などによる治療を指します。手術する前にがんを小さくして、温存術を行えるようにしたり、全身転移をくいとめて治療成績を上げる目的で行われます。術前補助療法がどの程度の効力があるかは臨床実験が進行中です。
- 術中迅速診断 外科的生検、または、手術中に切除した組織を病理医がすばやく診断をすることです。手術中にこの結果が病理医から届きます。その診断結果によって手術の追加、または、終了が決まります。
標本を凍結して作製するため、ホルマリン固定による永久組織標本と違い、標本は劣化しています。そのため、不確かなときは迅速診断をせず、永久標本による診断にまわします。 - 小胸筋 大胸筋の下にある小さな筋肉のことです。そのさらに下には肋骨があります。乳がんの手術の際には、大胸筋と小胸筋の間にあるリンパ節を郭清(全部切除)する場合があり、リンパ節郭清をしやすくするために、小胸筋を切除する術式もあります。小胸筋は呼吸を補助する筋肉で、切除しても障害はほとんどありません。
- 小葉 乳房は大きく分けて乳腺と脂肪から成り立っています。そのうち、乳汁を分泌する小さな腺房が集ってできたものを小葉といい、小葉が集って腺葉を形成しています。これらを総称して乳腺と呼びます。
- 触診 医師が患者の異常がある体の部分や内臓などの状態を診るために触って調べることを触診といいます。乳がんが疑われる場合、乳房の触診はとても重要です。しこりの場所、大きさ、硬さ、表面の性状、移動性などを調べ、乳首から分泌液が出ないか絞ってみたり、首や腋の下のリンパ節などが腫れてないか、腫れたリンパ節があれば、どんな状態かを調べます。触診は、座った姿勢で行う場合と、仰向けに寝て行う場合があります。
- 浸潤がん 乳がんは、浸潤がん、非浸潤がん、パジェット病と大きく三つに分けられます。そのうち浸潤がんとは、乳管内や小葉内にできたがん細胞が乳管や小葉の膜を破り、周りの組織に広がった状態をいいます。しこりなどの自覚症状があって発見されるものの多くがこのタイプで、血液やリンパ液に乗って遠隔転移を起こす可能性があります。
逆に乳管内や小葉内に留まっているものを非浸潤がん、乳頭にできた場合をパジェット病といいます。浸潤がんは組織のタイプによって通常型と特殊型に分類され、さらに通常型は細胞の分化度(正常細胞との違いの度合い)により、乳頭腺管がん(高分化)、充実腺管がん(中分化)、硬がん(低分化)に分類されます。 - 浸潤性小葉がん 多くの乳がんは、乳管から発生しますが、このタイプは、小葉の中のごく細い乳管から発生するがんで、浸潤がんの特殊型に分類されます。細胞が小さく、固まりを作らずに他の組織に入り込む性質を持っています。しこりを作りにくいことや、反対側の乳房にもできやすいこと、またお腹の中など、珍しい部位に遠隔転移をおこすことがあります。多発しやすいがんなので、乳房温存術を行うには慎重を期します。
小葉がんは、欧米型のがんと言われていますが、わが国の乳がんの欧米化に伴い、頻度は上昇しています。全乳がんの4~5パーセントをしめます。 - 神経ブロック ペインクリニックで基本の治療として用いられるものです。痛みを感じる末梢神経や神経節などの走行部に、体の表面から注射針を穿刺して、局所麻酔剤などを注入して痛みを遮断する方法です。腕や首から上の痛みには、星状神経節ブロック、胸・腰・脚等には、硬膜外ブロックが主に行われます。痛む場所に直接注射する、局所注入(トリガーポイント注射)も行われています。
- 進行乳がん がんの進行度は一般に病期あるいはステージということばで表され、乳がんの場合も病期分類があります。進行乳がんは最初の発見の段階でステージIIIBとステージIV、そして炎症性乳がんを指します。ステージIIIBはしこりの大きさを問わず、がんが胸骨の脇にあるリンパ節(胸骨傍リンパ節)や乳房の周囲や皮膚まで広がっているものを指します。ステージIVは鎖骨上リンパ節や骨、肺・肝臓などの臓器、乳房から離れたほかの場所に転移がみられる場合です。進行乳がんの予後はよくないとされていますが、長期間の効果が期待できる新しい治療を受けることができる場合もあるので、医師とよく相談することがすすめられます。
- 人工乳腺 乳房再建術は、自家組織を用いる方法と、人工物を用いる方法があります。人工物は、人工乳腺(インプラント)と呼ばれ、生理食塩水バッグ、シリコンジェル、コヒーシブシリコン等があり、手術により、大胸筋の下に埋め込みます。一般的には予めティッシュ・エキスパンダー(組織拡張器)によって、人工乳腺を埋め込むスペースを作り、皮膚を十分伸ばして後戻りしないようにしてから埋め込みます。
- 髄様がん 太い乳管の部分から発生する、浸潤がんのひとつで、特殊型に分類されています。顕微鏡で見ると、がん細胞は大きく、核も大きいので、顔つきが悪く見えます。(一般的に悪性なものほど細胞が大きいため、顔つきが悪いと表現します)が、乳管の中で膜に包まれており、浸潤しにくいタイプのがんです。リンパ節転移も少なく、比較的たちの良いがんと言われています。発生頻度は低く、全乳がんの0.5%程度です。
- 制吐剤 制吐剤とは、吐き気や嘔吐を止める薬のことです。制吐剤には、嘔吐反射を止める作用が脳に働く中枢性制吐剤、胃に働く末梢性制吐剤、脳と胃の両方に働く中枢性・末梢性制吐剤があります。最近では、抗がん剤治療の副作用である強い吐き気や嘔吐には、脳神経の特別な部位に働く5-HT3受容体拮抗剤と呼ばれる制吐剤が使われています。以前に比べ激しい吐き気や嘔吐をかなり抑制できるようになりました。5-HT3受容体拮抗剤にはグラニセトロン?(?カイトリル?)、アザセトロン?(?セロトーン?)、オンダンセトロン?(?ゾフラン?)、ラモセトロン?(?ナゼア?)、トロピセトロン?(?ナボバン?)?などがあります。
5-HT3受容体拮抗剤だけでは嘔吐を抑えられないときは、デキサメサゾンなどのステロイド剤(デカドロン)、ハロペリドール?(?セレネース?)、クロールプロマジン?(?コントミン、ウィンタミン?)、ジフェンヒドラミン?(?レスタミン?)、メトクロプラミド?(?プリンペラン?)、ドンペリドン?(?ナウゼリン?)?など様々な薬剤が併用されます。 - 生検 マンモグラフィーや超音波検査などの画像診断で異常が疑われた乳房のしこりや組織の一部、あるいはすべてをとってがん細胞がどうか診断することをいいます。しこりが触れやすい場合や嚢胞が疑われる場合は、穿刺吸引細胞診、また乳頭からの分泌物がある場合には、分泌物を採取して細胞診を行いますが、この場合にはしこりの細胞を採取することになり、外来で短時間に行われます。穿刺吸引細胞診や分泌物中の細胞診で診断が確定できなかった場合、さらに手術によってしこりの一部またはすべてを切除し調べますが、これを生検といいます。
細胞診では、細胞がバラバラのまま取れてきますが、生検の場合にはまとまった組織の状態で採取でき、腫瘍の立体構造も推定できます。生検には、太めの針をしこりに刺して組織の一部を採取する針生検と、メスで切開してしこりの組織を切り取る外科生検があり、外来または入院手術で行なわれます。組織診(組織学的診断法)ともいいますが、生検という場合には、手術前に確定診断をつける意味合いが、組織診という場合には、手術で摘出した組織の病理検査という意味合いがあるようです。 - 生存率 手術後の治療成績を示す言葉です。たとえば、5年生存率という場合は、術後5年以上経過したある集団の中で、5年以上生存している患者の割合を言います。ですから、再発や転移をしている患者も含まれます。無再発生存率(手術後、再発を起こしていないことを意味します)とは区別します。
- 生理食塩水バッグ 乳房再建に用いられる人工乳腺(インプラント)のひとつです。中に入っている生理食塩水は点滴用の塩水で、体液の組成に最も近いものです。手術の前または手術中にチューブを使って生理食塩水を注入します。長い間の使用実績があり、形は半円形のラウンドタイプと釣鐘型のアナトミカルタイプの2種類があります。内容液が漏れた場合は身体に吸収されて体外に排泄されます。他の人工乳腺に比べて触感はやや硬く、早い時期に破れたりしぼんだりする可能性があります。また、液体ですので、立った時と寝た時では形や大きさが違ったり、走るときに音がする、時間がたったり気圧の変化でしわができるところが欠点です。
- 石灰化 がんや炎症によって細胞が死んでしまった部分には、カルシウムの成分が溜まりやすいという特徴があり、石灰化と呼ばれます。マンモグラフィ(乳房のX線検査)では白い斑点のように写ることが多いですが、自覚症状はありません。石灰化が見つかっても必ずしもがんであるとは限りませんが、砂をまいたように見える(微細で、数が多く、形にばらつきがある)場合には乳がんが疑われ、更に詳しい検査が必要となります。
- 接線照射 乳房温存手術後に行う放射線療法の照射方法の名前です。手術の傷が治ってから、乳房全体に斜め横から照射します。日本乳癌学会の乳房温存療法ガイドライン(1999)によると、1回に当てる線量が1.8Gyの場合、週5回の照射で合計25~28回(ブーストを行なわない場合は30回以上が望ましい)、2Gyの場合は、23~25回(ブーストを行なわない場合は25回以上が望ましい)とされています。
- 穿刺吸引細胞診 マンモグラフィや超音波検査などの画像診断で異常が疑われた場合、乳房のしこりに細い注射針を刺して、溜っている体液や細胞を吸引して採取し、がん細胞の有無を調べる検査です。採取した細胞をプレパラートに吹き付けて、顕微鏡で調べます。針を刺すのでやや痛みを伴いますが、局所麻酔の必要はありません。しこりが小さいときは、エコーを見ながら行います。検査結果は「クラス」で表します。
- 線維腺腫 20代後半から40代によくみられる良性の腫瘍で、30代になると大きくなることはあまりありません。しこりの周辺がはっきりしていて、痛みはふつうありません。クリクリ動く硬いしこりで、がん化することがほとんどないので経過観察となりますが、外見からの診断では乳がんとの区別が困難であるため、専門医による鑑別(画像診断や細胞診)が必要です。まれに成長がとまらず大きくなったしこりは、局所麻酔で摘出することがあります。
- 線量 放射線の量のこと。放射線療法で線量を表す単位としてはグレイ(Gy)が使用されます。これは、人体にどれだけ吸収されたかという、吸収線量に対して使われる単位です。
- 腺腔形成度 腺とは分泌活動を行う細胞の集まりで、分泌物を出す穴のようになった部分を腺腔といいます。乳腺内に発生する乳がんは、すべて腺を構成する細胞(腺細胞)が元になっていて、がん化した後にも腺腔を作ろうとする性質が残っています。手術で取り出した組織を顕微鏡で見て、細胞の腺腔形成度が高い場合は、正常細胞に近く悪性度が低い、腺腔形成度が低い場合は悪性度が高い、と評価されます。
- 全身麻酔 全身麻酔とは、脳に作用する薬を用いて、身体に痛みや刺激が加わっても痛いと感じない状態を作り出し、行われている事を「わからなく」するものです。全身麻酔の三要素は「覚えていないこと」「痛くないこと」「動かないこと」です。その種類には「吸入麻酔」「静脈麻酔」があり、併用されることもあります。手術時は、全身麻酔の作用や、筋弛緩薬(筋肉を緩める薬)の併用により呼吸が完全に停止するので、口から気管までビニールのチューブを入れ、それを通じて人工呼吸を行います。そのため、手術後は喉が痛くなったり、痰が多くなることがあります。
- 全脳照射 放射線療法のひとつです。乳がんの場合は、脳転移(転移性脳腫瘍)に用いられる治療です。数個以上の転移がある場合は全脳照射を行うのが一般的です。また、腫瘍摘出手術との併用、定位照射(ガンマナイフ等)と併用する場合もあります。
脳全体に30~40グレイの線量を2~4週間照射するのが通常ですが、患者やがんの状態によりこれより多くの線量をかけることもあります。この治療には、MRIでも見つけられないような小さな転移も治療可能というメリットがありますが、一方で照射できる線量には限りがあるため新たな転移が起こった場合に治療が困難になるというデメリットもあります。 主な副作用は、広範囲の脱毛です。 - 組織学的異型度 切除したがん細胞を顕微鏡で詳しく観察し、細胞の状態や特徴により診断することを組織診(組織学的診断法)といい、その結果判定されたがんの悪性の度合いを組織学的異型度(組織学的悪性度)といいます。判断の要素には、組織の特徴、核異型、核分裂像などがありますが、一般的にはがん細胞の核が示す形態異常(異型性、顔つきの悪さ)の程度のことです。
現在広く使用されている分類法は、腺腔形成度(少ないほど悪性)、核異型度(異型性が強いほど悪性)、核分裂像(多いほど悪性)の3要素を点数化し、その合計によりグレード1~3に分類します。数字が大きいほど悪性度が高いということになります。病理診断の結果の報告事項として伝えられます。 - 奏効率 ある治療法が、がんを縮小させる効果を表す率で、臨床試験をもとに算出されます。具体的には、治療を受けた患者のうち、がんの大きさが半分以下になり、その状態が1ヶ月以上続いた患者の比率を指します。日本では、小人数の臨床試験(第II相臨床試験:腫瘍縮小の効果や副作用を見る)においては奏効率20%以上が目標とされます。
- 造血幹細胞移植 血液をつくるもとになる細胞(造血幹細胞)を移植することを造血幹細胞移植といいます。それは、採取場所によって、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植と分類されます。また、自分自身の造血幹細胞を使った移植を自家造血幹細胞移植、他人からの移植を同種造血幹細胞移植といいます。乳がん治療に、大量化学療法と造血幹細胞移植を併用した治療が応用され、1989年代~1990年代に多くの臨床試験が行われましたが、有用とする結論は得られず、最近ではほとんど行われなくなりました。
た行
- ターミナル もともとは「最終の」「終末の」「終着駅の」という意味ですが、がんの治療の際に使う場合には、積極的な治療が有効でなくなった患者の生命が終末に近づいた時を意味します。身体的苦痛を緩和し、死への恐怖を和らげ、残された大切な人生を充実して過ごせるように援助する、ターミナルケアと呼ばれる医療が重要になります。
- タモキシフェン 抗エストロゲン剤。商品名はノルバデックス、タスオミンなど。
- ティッシュ・エキスパンダー 人工乳腺を使った乳房再建を行う際、人工乳腺を埋め込む前に、その部位の皮膚や皮下組織を引き伸ばすために用いる組織拡張器です。人工乳腺は、埋め込む部位に予めティッシュ・エキスパンダーを入れて、十分なスペースを作り、組織の後戻りを防止して乳房の柔らかな感じを出してからシリコンを埋め込むのが一般的です。ティッシュ・エキスパンダーを入れた後は、定期的に生理食塩水を注入して少しずつ皮膚を伸展していきます。
- ドレーン 乳がんの手術でリンパ節郭清を行った後、切除した部分に溜まるリンパ液や血液を排出するための管がわきの下に入れられます。この管をドレーンと言い、排液を貯める小さな弁当箱のようなものがくっついています。回診時にはドレーンから出る排液の量が確認され、廃液の量が少なくなるとドレーンは外されます。リンパ郭清レベルや個人差にもよりますが、手術後5~7日くらいで外されます。
- 代替医療 代替医療とは、その効果が科学的に確認されていないため、西洋医学領域では治療法として選択されない医療の総称です。近代医療が病気の原因を除去することを目的とし手術や薬剤投与という方法を用いるのに対し、代替医療は保健・予防を目的とし自然治癒力の向上を図る方法を用います。例えば、漢方、鍼灸、気功などの東洋医学やインドのアーユルヴェーダなどの伝統医学、指圧・マッサージ・カイロプラクティックなどの用手療法、食事療法、ホメオパシー、アロマテラピーなどの方法です。サプリメントの摂取も代替医療に含まれます。
米国では、「代替医療」英国では西洋医学の「補完医療」とされ、近年ではこの二つをまとめて補完・代替医療(Complementary?and?Alternative?Medicine?;CAM)と呼ばれています。 - 大胸筋 乳房の下にある胸の大部分の筋肉のことです。腕の運動機能や呼吸運動に関係しています。乳がんの手術の際、以前は乳房全部と大胸筋、小胸筋も取り除く胸筋合併乳房切除術が広く行われていました。しかし、大胸筋を切除しても必ずしも治療成績が向上しないことが判明し、現在は胸筋を温存する術式が一般的となっています。
- 脱毛 抗がん剤は血液を通じて全身にいきわたり、細胞分裂が活発な細胞に作用するため、がん細胞だけでなく、体毛・口粘膜・骨髄などの正常細胞にも作用します。抗がん剤治療による脱毛は、抗がん剤が毛根の毛母細胞に作用するので、脱毛が起こります。抗がん剤を使用して2~3週間で抜け始めますが、使用する抗がん剤の種類や?量・組み合わせなどによって、脱毛の程度は異なります。髪の脱毛は全体的であったり、部分的であったり、髪の毛以外の体毛が抜けることもあります。?治療が終わると、1~2ヶ月で毛が生えはじめ、3~6ヶ月で?ほとんど生え揃いますが、新しく生えてきた毛は前と比べて形や性質が違うこともあります。
放射線を照射した場合は、照射を受けた部位の皮膚が炎症をおこし、毛根にまで影響がおよび、照射した部位に脱毛がおきます。放射線治療を開始して2~3週間してから脱毛が始まります。放射線治療が終わって、皮膚の炎症がおさまると、正常な皮膚が復活して、毛根の準備が整い、治療終了後、2~3ヶ月で毛が生え始めます。 - 断端陰性 乳房温存手術で切取った部分の断端(切り口)にがんが残っているかどうかを調べ、残っていない場合を断端陰性といいます。手術中は術中迅速診断で調べますが、迅速病理検査は確実性には欠けるので、術後の病理検査が重要になります。断端陰性の場合には、追加の切除は必要になりません。
- 断端陽性 乳房温存手術で切取った部分の断端(切り口)にがんが残っているかどうかを調べ、がん細胞が残っている場合を断端陽性といいます。手術中は術中迅速診断で調べますが、迅速病理検査は確実性には欠けるので、術後の病理検査が重要になります。断端陽性の場合、追加切除を行なうか温存手術を乳房切除術に変更することになります。
- 超音波検査 超音波(人間の耳には聞こえない音)を体の表面にあて、臓器から返ってくる反射の様子を画像にするものです。検査は体の検査部位にゼリーを塗り、プローブと呼ばれる器械をあてて移動させ、モニターに映る映像を観察します。音波を使う検査なので、ひんやりするだけで痛みもなく、放射線の被曝もありません。この検査では腫瘤の性状の観察や、良性・悪性の鑑別をしたり、触診では分からない数ミリのしこりやリンパ節の転移を見つけ出し、その状態を観察することができます。
- 追加照射 乳房温存手術後に行なう放射線療法で、接線照射のあとに追加(boost)で放射線を照射することです。断端陽性またはそれが疑われる場合に局所再発予防の目的で行われます。接線照射では乳房全体に放射線を照射しますが、追加照射ではがんのあった部分にしぼって照射します。電子線を体の外から照射する方法(外照射)が一般的ですが、小線源(粒状の小さな放射線を発する物質)を、がんの病巣に直接入れて内側から放射線をあてる方法(組織内照射)もあります。現在では追加照射を行うかどうかや、行う場合の線量は、施設により異なるようです。
- 低分化 (ていぶんか) 腫瘍細胞がその発生した組織や器官の正常細胞に近ければ近いほど分化した腫瘍といいます。低分化がんとは、発生した組織の細胞(乳がんの場合は正常な乳腺組織の細胞)との類似性が少ないものをいい、低分化型の方が転移しやすく悪性度が高くなります。
予後については、高分化型が低分化型より良好のことが多いといわれています。通常、がん組織では1種類の型のみがみられることはまれでそれぞれの型が混在しており、どの型がいちばん多く観察されるかでがんの悪性度が判定されます - 定型乳房切除術 胸筋合併乳房切除術のことで、乳房全部と大胸筋、小胸筋、及び付近のリンパ節(腋窩リンパ節と鎖骨下リンパ節)をすべて切除します。この方法を開発したハルステッドという外科医の名前を取ってハルステッド法とも呼ばれ、半世紀以上に渡って標準術式として世界中で行われていました。しかしながら、このように広範囲に切除しても必ずしも治療成績が向上しないことが判明し、現在では、乳がんが進行して胸筋にまで浸潤している場合などを除いて、殆ど行われなくなっています。
- 転移 がん細胞が、リンパの流れや血液の流れに乗って、リンパ節(リンパ節転移)や他の臓器(遠隔転移)に流れ着き、そこで増殖することを言います。
- 電子線 放射線療法に使われる放射線のひとつです。電子線による治療は、リニアックという機械により行なわれます。
- 動注療法 動注化学療法は腫瘍に栄養を運んでいる動脈に、直接抗がん剤を投与する方法です。カテーテルという細い管を動脈内に挿入し、腫瘍を栄養している動脈へカテーテルを誘導して、その血管内に直接抗がん剤を注入します。抗がん剤の投与方法としては、血管造影をしながら行うone?shot(ワンショット)動注療法や、リザーバーという器具を皮下に埋め込んでカテーテルを留置する、経皮的カテーテル留置動注療法があります。腫瘍に抗がん剤を高濃度に投与でき、全身に循環する抗がん剤も少なくて済み、副作用が軽くて局所の腫瘍が小さくなるのを期待できます。手術前や放射線治療前に腫瘍を小さくする目的で行われたり、放射線治療と同時に行われたり、何らかの治療が行われた後の維持療法として行われたり、転移したがんに対しても行われます。しかし、一方で、動脈損傷や、局所の感染症などの合併症をおこすこともあります。乳がんの場合、静脈内投与と比べて動脈内投与(動注療法)の方が優れているという明らかなデータはありません。
- 疼痛緩和 末期がん患者の身体的苦痛の中で最も苦痛に思う症状は、「疼痛」が約70%と最多です。つまり、疼痛緩和(除去)を行うことは、QOLの向上に深く結びついていると言えます。 ?? 疼痛緩和の治療については、1.痛みに妨げられない睡眠時間の確保、2.安静時の痛みの消失、3.体動時や体重負荷時の痛みの消失、の3つの段階的目標に沿って進められます。具体的な治療方法としては、鎮痛薬、神経ブロック、脳神経外科的治療法、放射線療法、理学療法、心理療法などがあります。
な行
- のう胞 乳腺の良性の病気の一つで、乳管が袋状に膨らんで中に黄色の液体や、濃縮した乳汁などが溜まった状態のことです。一つだけのこともあれば、両側の乳房に多発することもあります。痛みがあれば、中の液体を針で吸引することで症状は改善します。超音波検査、マンモグラフィで診断できますが、のう胞の中にがんが隠れている場合もあり、針で吸引した液体を細胞診することもあります。
- 二期再建 乳房切除後、期間をおいてから乳房再建手術を行う方法です。本人が希望し、体力が許すのであれば、何歳でも、術後何年たっても可能ですが、一旦は乳房がない状態になる、手術や経費が再び必要となるなどのデメリットがあります。再建した周囲に再発があった場合は、再建した乳房を切除しなければならなくなることもありますが、二期再建ではこのような事態をある程度防ぐことができます。再建した場合の再発を見逃す危険性は少ないとされていますが、再発の心配が少なくなってから再建するのが望ましいと考える医師も少なくありません。切除手術と同時に行う方法を一期再建または同時再建といいます。再建に望ましい時期については、病状によって変わってきます。
- 乳管 乳房は大きく分けて乳腺と脂肪と皮膚から成り立っています。そのうち、乳腺は乳首から奥に向かって伸びる一本の木に例えられ、乳管は枝や幹の部分にあたります。腺房と呼ばれる百以上の小さな球状からなる小葉で作られた乳汁を乳頭へ運ぶパイプラインの役目をしているのが乳管です。多くの乳がんは、この乳管の内腔(内側)の上皮細胞から発生するので、浸潤性乳管がんというかたちをとります。
- 乳管造影 乳頭から分泌物(血液の混じった乳汁など)がある場合、乳汁を運ぶ乳管の中に腫瘍ができていることがあります。この腫瘍を診断する方法として、乳頭にある小さな穴からとても細い管を入れ、少量の造影剤を注入します。その後、マンモグラフィ撮影(乳房のX線撮影)をして、乳管の形を観察して病変の場所やその性質を診断します。触診では分からないような乳管内乳頭腫や乳管内がんを発見するのに有効です。
- 乳管内視鏡 しこりはないが、乳頭から分泌物(血液の混じった乳汁など)がある場合、乳汁を運ぶ乳管の中に腫瘍ができていることがあります。乳管内視鏡とは、乳頭の小さな穴からとても細いファイバースコープを入れ、乳管の中をモニターの画面に写し出し、乳頭へのがんの進展状況や乳管の中にある小さな病変を観察する方法です。乳頭に近いところしか検査できませんが、この内視鏡で細胞や組織を採取し、細胞診や組織診をすることもあります。
- 乳管内乳頭腫 乳管にできる良性腫瘍です。乳管の細胞がいぼのように増殖する疾患で、30~50歳台の女性に多く発生します。柔らかく小さいため、ほとんどしこりとして触れません。痛みなどの症状はなく、乳頭から血の混じった分泌物がみられます。乳がんとの鑑別が重要で、分泌物の細胞診や乳管造影検査がなされます。血の混じった分泌物が出たら、必ず専門医の診断を受けましょう。診断を確定するために、生検が必要になることがしばしばあります。
- 乳腺 乳房は大きく分けて乳腺と脂肪と皮膚から成り立っています。乳汁を分泌する小さな腺房が集ってできた小葉、その小葉が集って腺葉を形成し、各腺葉には乳管が一本づつ出ていて乳頭につながっています。これらの組織を総称して乳腺と呼びます。乳腺組織の数は乳房の大きさに関係なく、15~20個程度ですが、乳房内に均一に存在するわけではありません。外側上方に多く、内側下部には少ないのです。そのため、乳がんの発生場所は外側上方が多くなっています。また、乳腺は月経周期によるホルモンの変動の影響を受け、増殖したり、消退したりしています。
- 乳腺炎 乳房が赤く腫れて強い痛みがあり、発熱を伴うことが多い病気です。授乳期に母乳が乳腺にたまったままになって起こる場合をうっ滞性乳腺炎といいます。また乳頭から細菌が入り込み炎症を起こす細菌性乳腺炎もあります。授乳の経験のない女性も、陥没乳頭である方は細菌性乳腺炎になることがあります。治療法としては、前者はマッサージや搾乳器を使い、後者は抗生物質や消炎剤を投与します。場合によっては切開することもあります。乳がんの中には、皮膚に発赤を伴う炎症性乳がんもあるので注意が必要です。
- 乳腺外科
乳がんの治療は日本ではほとんど外科で行いますが、中でも乳がんなど乳房の病気を専門に治療するのが、乳腺外科です。乳腺外科の医師の多くは、日本乳癌学会の認定医、専門医という資格を持っています。- 乳腺症
女性ホルモンなどの影響で、乳腺組織が腫れたり、しこりやのう胞ができたりする乳腺の変化を乳腺症と言います。線維のう胞性変化とも言います。乳房の痛みを伴うこともあります。とくに、月経前にその症状が強くなる傾向があります。治療の必要は、通常はありません。いまのところ乳腺症からがんへの移行はないと考えられていますが、乳腺症のためにがんが見つけにくくなっている場合があります。定期的に超音波検査、マンモグラフィを受けるようにしてください。- 乳頭びらん
びらんとは、ただれのことです。乳頭部だけが湿疹のようにただれる場合、皮膚の炎症のことが多いですが、かさぶたを作ってもなかなか治らない、しつこい湿疹のような症状が続く場合、乳がんの一種であるパジェット病が疑われることがあります。- 乳頭陥没
乳頭が乳房内にめりこむようにくぼんだ状態で、乳頭全体が中に引っ張り込まれています。生れつき、または思春期以降に乳頭の中心部だけ陥没している場合は陥没乳頭と言われますが、乳がんとの関係を疑われるのは、もともと突出していた乳頭がへこんできた場合です。がんが皮下やクーパー靭帯(乳腺を支えている組織)に及んできた場合、乳頭が引っ張られてがんの方向を向いてしまうことがあります。これをポインティング症状といいます。- 乳頭腺管がん
浸潤がんの通常型の一つです。乳がん全体の約25パーセントと言われています。がん細胞が腺管を作りながら、周囲に散らばっていくタイプです。乳頭状(ポリープ状)のがん細胞の増殖と管腔形成(空洞化すること)が特徴で、がん巣の中心部に細胞壊死がみられるタイプもあります。通常型の中では最も正常細胞に近い形態を持っていて、比較的予後もいいタイプです。- 乳頭分泌
乳頭から分泌物が出ることで、妊娠授乳期以外のものを異常乳頭分泌といいます。診断には、分泌物が出ている量、出方(1箇所から出るのか、数箇所からか)、そして分泌物の色をチェックすることが重要です。片方の乳首の1箇所から、透明、茶褐色、血液が混ざったような分泌物がある場合、すぐに専門医に相談してください。しこりがなく、分泌物がある場合の検査は、まず分泌物を取り細胞診や腫瘍マーカー(CEA)を検査することが多いようです。更に、必要に応じて乳管造影や乳管内視鏡を行います。乳頭分泌のみで発見された乳がんは、非浸潤がんであることが多く、予後は良好であることが多いと言われています。- 乳頭分泌物細胞診
塗沫細胞診とも言います。乳頭などからの分泌物がある場合、その液を採取し、スライドグラスにつけて、顕微鏡でがん細胞が含まれていないかを観察します。分泌されている液を使うので検査に痛みは伴いません。- 乳房円状部分切除術
しこりとその周囲の正常な乳腺を部分的に丸く切除する手術法です。がん細胞はしこりだけでなく、周辺の乳腺組織に入り込んでいることが少なくないため、しこりの周囲数センチの正常な乳腺も一緒に切り取ります。この術式の長所は、切除範囲が狭いため乳房の変形が比較的少なくてすむことです。短所は、切除する範囲が狭いことにより、肉眼では見えないがん細胞が取り残される可能性が高くなることです。- 乳房温存術
乳がんの手術のうち、乳房の一部だけを切除する術式です。同時に腋窩リンパ節の郭清も行いますが、最近ではリンパ節を切除しない方法もあります。乳房温存術の最大の長所は、乳房を残せること、短所は、乳房内再発の可能性があることです。日本でも1980年代後半より積極的に取り組まれ、現在、乳房温存術は、部位にもよりますが、乳がんI期、II期の標準術式として確立されつつあります。温存手術では、乳房に肉眼では見えない少量のがん細胞が取り残されている可能性があるため、残った乳房に放射線治療を行うことが原則となります。- 乳房再建
乳がんの手術により切除してしまった乳房のふくらみや乳頭・乳輪を形成手術によって再び作ることです。ふくらみを作る方法は、自分の体の一部を使用する筋皮弁法と、いわゆる人工乳腺を埋め込むインプラント法、これらの併用の3種類に大別されます。筋皮弁法では、広背筋または腹直筋及び脂肪を使うことが一般的です。人工乳腺の場合は、ティッシュ・エキスパンダー+シリコンインプラント、生理食塩水バッグなどが使われます。どちらの方法も、乳房切除手術と同時に行う場合(一期再建)と、切除手術から時間を置いて行う場合(二期再建)があります。
どのような方法が良いかは患者によって違いますので、それぞれのメリット・デメリットを十分検討することが必要です。- 乳房扇状切除術
乳房温存術のうち、しこりとその周囲の乳腺組織を、乳頭を中心にして扇状に切除する手術法です。温存術の中では最も切除する範囲が広く、4分の1切除とも言いますが、正確に4分の1というわけではありません。切除範囲が具体的にどの程度になるか、術前に主治医に確認することが大事です。比較的しこりが大きい場合でもがんを取り残す可能性が少ないという長所がありますが、切除範囲が大きいため残った乳房に変形を生じるなど、特に乳房の小さい人には整容面でのダメージが大きくなってしまう短所があります。乳房の変形が強い場合、部分的に筋肉や脂肪を充填して形を整える手術を行うこともあります。- 粘液がん
浸潤がんの中でも比較的まれで、特殊型に分類されています。粘液(べとべとした液体)を作る性質を持つがんです。多くのがんのしこりは、がん細胞が詰まっていますが、このがんは、しこりの大部分が粘液で、がん細胞は粘液の中に浮いたように存在します。したがって、タチの良いがんと言われ、転移を起こすことは割と少ないと言われます。全乳がんのおよそ4パーセントをしめています。- 脳転移
がん細胞が脳に転移することです。頭痛、吐き気、嘔吐、ふらつき、感覚の変化、体の一部が動かしにくい、行動や精神面での変化、けいれんなど転移した部位により異なる症状が現れます。診断は、CT、MRI、神経学的検査などで行なわれます。
治療は放射線治療が主で、全脳照射のほか、ガンマナイフなど腫瘍巣を集中的に照射する治療があります。手術を行うこともあります。薬剤としては、転移性脳腫瘍の多くは周囲の腫れ(脳浮腫)を伴うため、脳浮腫に有効なステロイドホルモンが選択されます。 - 乳腺外科
は行
- ハーセプチン ハーセプチン(一般名:トラスツヅマブ)は、HER-2(細胞の表面にあたるたんぱく質の一種で、細胞の増殖を促す受容体)が多くある乳がんに用いられる分子標的薬です。日本では2001年6月から健康保険適応で使用できるようになった比較的新しい薬で、進行・再発乳がんに用いられます。HER-2受容体が多い乳がんは、乳がん全体の2割と言われていますが、がん細胞の増殖の速度が速く、転移しやすいという特徴があります。ハーセプチンの登場により、進行・再発乳がんの治療効果が格段に上がりました。
ハーセプチンはHER-2受容体の多さによって効き目が変わります。HER-2受容体が少ししかない場合は殆ど効きませんので、必ずHER-2受容体の数を調べてから使われます。ハーセプチンは、1週間に1回静脈点滴するのが標準的な治療法です。副作用は、抗がん剤に比較して、軽いとされています。 - パジェット病 パジェット病は特殊な乳がんです。乳頭にがんができ、乳頭や乳輪部がただれます。通常の乳がんのようにしこりは作らないので、乳頭部の湿疹と間違われることがあります。症状は、乳頭や乳輪のただれ(かゆみ、ひりひりする痛み)や、乳頭から出血や分泌物があることなどです。細胞診、組織診で調べてパジェット細胞という特徴的な細胞が存在すればパジェット病と確定できます。手術の予後は良好でよほど進行しないと転移はしません。
- プロゲステロン 女性ホルモンの1つで、黄体ホルモンともいいます。排卵後の卵巣にできる黄体から分泌されます。子宮を妊娠に備えさせ、また乳汁の分泌にも関わっています。プロゲステロンは、プロゲステロンレセプター(PgR)に結合し、細胞に作用します。乳がんの増殖にもかかわっており、乳がん細胞表面にPgRが発現している(陽性)場合、ホルモン療法に対する効果が期待できます。多量のプロゲステロンは乳がんの増殖を抑制することが知られています。
- プロゲステロン剤 作用のメカニズムは複雑でよく分かっていないのですが、多量のプロゲステロン剤を服用すると乳がん細胞の増殖が抑えられることが分かっています。乳がんの治療には、合成プロゲステロン剤(MPA:酢酸メドロキシプロゲステロン)が使われます。抗エストロゲン剤(タモキシフェン)が効かなくなった乳がんにも効果が期待でき、またレセプターが陰性の場合にも若干の効果が期待できます。他のホルモン剤が効かなくなったときに用いられることが多いです。また抗がん剤による食欲減退を軽減する作用のため、抗がん剤とともに用いられることもあります。飲み薬で、1日3回服用します。商品名は「ヒスロン」です。副作用はやや強く、肥満、食欲増進、血栓症、性器出血、気分の高揚感などがあります。
- ペインクリニック 疼痛外来のことで、疼痛の緩和を目的とした診療科です。痛みには「病気が引き起こす痛み」と「痛みそのものが病気」があります。前者の治療は病気の原因をつきとめ、それに対する治療を行うことで軽快しますが、後者は「治療のしようがない」とされたり、なかなか治療の効果があがらないことがあります。ペインクリニックでは、通常後者の痛みに対する除痛を行います。治療法は、神経ブロック療法および薬物療法が中心ですが、日本では神経ブロック療法が多く行われています。
- ホスピス 最期を迎えようとする患者に対して、肉体的苦痛を取り除くための治療や看護をするとともに精神苦痛をも軽減して、最期まで人間らしく良好なQOLを実現するため、患者や家族を支えていくことを目指した医療施設をいいます。医師や看護師の他に、宗教家、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士、薬剤師、栄養士、訪問看護師、ボランティアなどがチームを組んで医療に携わります。
- ホットフラッシュ ホルモン療法中にもっともよく見られる副作用の1つです。更年期症状としてもよく見られます。暑くもないのに突然顔がカーっと熱くなって汗が吹き出たり、のぼせたりします。「顔のほてり」が特徴的です。
- ホルモンレセプター 細胞の中で、ホルモンが作用する部分をレセプター(受容体)といいます。ホルモンをキャッチするアンテナのようなものです。ホルモンレセプターはホルモンが作用する部位の細胞にありますが、乳がん細胞の中にもあります。乳がん細胞のレセプターにホルモンが結合すると、細胞の中の遺伝子の働きが活発になって、乳がん細胞が増殖します。ホルモンレセプターにはいろいろな種類がありますが、乳がんの腫瘍を病理検査する時に調べるのは、エストロゲンが結びつくエストロゲンレセプター(ER)とプロゲステロンが結びつくプロゲステロンレセプター(PgR)の2種類です。病理検査の時には、細胞がこれらのレセプターをどのくらい持っているか調べます。その結果、ERの割合が多いと(陽性)だと、ホルモン療法の効果がもっとも高いとされます。PgRのみが陽性の場合にもホルモン療法に対する効果が多少はありますが、両方とも陰性の場合には、あまり効果が期待できません。ホルモンレセプター陽性と診断された場合は、術後にホルモン療法(内分泌療法)を行うことが多く、陰性の場合には、抗がん剤による化学療法を行うことが多いようです。
- ホルモン感受性 乳がんの発症時、がんの多くは女性ホルモンによって増殖が促進されるという性質を持ち、ホルモンに反応する性質があるときにはホルモン感受性があるといいます。感受性があるかないかは、切り取ったがんの組織で調べることができます。ホルモン感受性があれば、治療にホルモン療法(内分泌療法)を使い、感受性がなければ、一般的にはホルモン療法を行いません。
- ホルモン療法(内分泌療法) 手術後の治療法(術後補助療法)の1つです。手術で切除したものを調べた病理検査の結果、ホルモンレセプターのうちのエストロゲンレセプター(ER)が陽性と言われた患者さんが、主に対象となります。乳がんの発育を促すエストロゲンの働きを止めることによって、乳がん細胞が体の中で増えるのを阻止しようという方法です。具体的な方法としては、飲み薬や注射などがあります。使用される薬にはいくつかの種類があり(抗エストロゲン剤、LH-RHアゴニスト製剤、アロマターゼ阻害剤、プロゲステロン製剤など)、どの薬が使われるかは病理検査の結果や、閉経前、閉経後などの状況の違いによって異なってきます。
ホルモン療法の特徴は、がん細胞を直接攻撃する抗がん剤治療(化学療法)よりは作用がマイルドですが、副作用が少なく、手術後に長期間の投与(2年~5年程度)をすることによって、長く再発抑制効果が期待できるということです。しかし副作用が全くないわけではありません。ほてり・のぼせといった更年期障害に似た症状が多く現れます。血栓症なども糖尿病や高齢の患者さんでは、無視できない副作用です。 - 針生検 局所麻酔をして、メスで2ミリほど皮膚を切開し、太い針を刺して、幅1ミリ、長さ1センチほどの組織を採取する方法です。この針は、細胞診の針に比べてかなり太く、直径は2ミリから3ミリくらいです。採取した組織片から診断をします。メスで切開して切除する生検と比べて、小さな傷で済みます。
- 肺・胸膜転移 がん細胞が肺や胸膜に転移することです。胸膜は、左右に一対ある、肺の表面と胸腔の内側を覆う二重の膜です。乳がんの遠隔転移では骨転移の次に多くみられます。症状は通常あまり感じませんが、進行すると息切れ、咳などの症状が現れます。診断は胸部X線写真、CTなどで行なわれます。治療は、全身薬物療法として、ホルモン療法や化学療法による治療が一般的です。胸水が溜まり息苦しい場合は、ドレーンで胸水を抜いたり、再び胸水が溜まらないように薬剤で胸膜と肺の隙間を癒着させて塞ぐ場合もあります。
- 皮下全摘乳腺切除術 皮膚と乳頭を残して乳腺を全部摘出します。皮下乳腺全切除術ともいい、施設により定義は少し異なります。原則として、乳房再建を前提に行われる手術法で、乳房本来の外枠がそのままなので元の形に非常に近い再建乳房となります。乳頭は切除し皮膚のみを温存する皮膚温存乳房切除術(Skin-sparing?mastectomy)をこの術式に含める場合も多く、乳頭・乳輪を温存する術式を乳頭温存乳房切除術(Nipple-sparing?mastectomy)ともいいます。
- 皮下転移・皮膚転移 がん細胞が、皮下または皮膚に転移することです。皮下転移は、皮膚の下に出来るしこりのようなものであり、皮膚転移は、皮膚表面の外観の変化で見ることが出来ます。診断は大きさや広がりの変化、針生検などで行ないます。治療は、全身薬物療法として、ホルモン療法や化学療法による治療が一般的です。自覚症状を感じやすい部位のため、不快感がある場合など、QOLを維持するために、外科手術による切除、放射線などによる治療を行なうこともあります。
- 非浸潤がん 非浸潤がんとは、乳管内や小葉内にできたがん細胞が乳管や小葉の膜の中に留まっているものをいいます。ほかの組織に広がっていないため、理論的には乳腺を全切除することにより完治します。乳管や小葉の膜を破り、周りの組織に広がったものを浸潤がん、乳頭にできた場合をパジェット病といいます。しこりがなく、乳頭分泌のみで発見された乳がんは、非浸潤がんであることが多く、マンモグラフィ(乳房X線)で発見される微細な石灰化も、非浸潤がんの可能性があります。超早期の状態といえますが、乳管内を這うように広がりやすいため、乳房全切除術を行う場合が多いです。
- 非浸潤性小葉がん がんが乳管の膜を破らず留まっている非浸潤がんのひとつです。小葉の中のごく細い乳管から発生するがんですが、しこりを作らず、石灰化も起こさないので、別の乳がんを切除したときに偶然発見されることが多いがんです。浸潤がんになる可能性は低く、放置しても浸潤がんにならないままのこともあります。しかし、しばしば複数の部位にたくさんできたり、反対側の乳房に現れる可能性が高いとされています。 発生頻度はとても低く、全乳がんの0.1%程度です。
- 非浸潤性乳管がん 非浸潤性乳管がんとは、がん細胞が乳管内にとどまっている、非常に早期のがんを言います。がん細胞が乳管内にとどまっているので、リンパ節や他の臓器への転移はありません。適切な治療をすればほぼ完治できます。ただし、乳腺内を広範囲に広がっていることが多く、乳房切除術を受けなけなければならないことがしばしばあります。診断に時間がかかることがありますが、進行は遅いので、心配することはありません。
- 非定型乳房切除術 胸筋温存乳房切除術のことで、乳房を全部切除する手術法のうち最も標準的な術式です。乳房とリンパ節、胸筋上の組織を切除します。このうち、大胸筋と小胸筋を温存して腋窩リンパ節の郭清を行うものを「オーチンクロス法」といいます。また、大胸筋と小胸筋は温存しつつリンパ節の郭清を広く行う「児玉法」、大胸筋は温存するが小胸筋を切除し、腋窩・鎖骨下のリンパ節の郭清を広く行う「パティ(ペイティ)法」などがあります。
- 微細石灰化 マンモグラフィ(乳房X線)で発見される微細な石灰化のことで、自覚症状はありません。X線写真で乳がんに特徴的な微細な石灰化像が写っている場合は、しこりを触れない場合でも、乳がんが疑われます。
微細石灰化が見られても、最終的な診断には、その部分の細胞や組織を実際に取って、病理の診断をすることが必要です。ある日本の調査(微細石灰化の病理組織検査200例)では、約7割は良性、約3割は乳がんで、うち約8割が非浸潤がんという結果が発表されています。最近では、マンモグラフィを利用した検査が増えているため、微細石灰化から非浸潤がんが発見されるケースが増えています。 - 標準治療 標準治療とは、ある一定の基準にのっとった治療のことです。医師個人の勘や経験に頼ったあやふやな医療ではなく、大規模な臨床試験によって効果が証明された、その時の最も成績の良い治療方法が標準治療です。誰もが、どこでも、同じように最良の医療が受けられることを目指した考え方です。欧米では標準治療を行う上での指針となるガイドラインが数多く公表されています。サンクト・ガレンでの会議が推奨する治療もその一つです。乳房温存療法に関しては、1999年に日本乳癌学会からガイドラインが発表されています。現在の医療では、科学的根拠に基いた医療(EBM)によって決められた標準治療を、インフォームド・コンセントを十分行った上で行うことが必要不可欠なものとなりつつあります。
- 病期分類 病期とはがんの進み具合を表すもので、ステージ(Stage)とも言います。乳がんの病期分類はしこりの大きさやリンパ節への転移のあるなし、皮膚などへの広がりなどによって、以下のように分類されます。(日本乳癌学会の乳癌取り扱い規約第14版より)
- 病期0:乳管の中だけに留まっていているがん(非浸潤がん)、またはパジェット病
- 病期I:しこりの大きさが2cm以下で腋窩リンパ節(腋のリンパ節)に転移がないと考えられるもの
- 病期IIA?:しこりの大きさが2cm以下で腋窩リンパ節に転移があると考えられるもの、または、しこりの大きさが2cmを超えるが5cm以下で腋窩リンパ節に転移がないと考えられるもの
- 病期IIB?:しこりの大きさが2cmを超えるが5cm以下で腋窩リンパ節に転移があると考えられるもの、または、しこりの大きさが5cmを超え腋窩リンパ節に転移がないと考えられるもの
- 病期IIIA:しこりの大きさが5cmを超え腋窩リンパ節に転移があると考えらるもの、または、しこりの大きさを問わずリンパ節周囲組織やリンパ節相互に固定した腋窩リンパ節転移があるもの
- 病期IIIB:しこりが胸壁に固定しているもの、皮膚がただれていたり、潰瘍になっていたり、むくんでいたりするもの、または、胸骨の脇にあるリンパ節(胸骨傍リンパ節)に転移があるもの
- 病期IV:しこりの大きさや腋窩リンパ節の状況を問わず、遠隔転移(鎖骨上リンパ節転移を含む)を伴うもの
- 病理 手術などで取り出された組織を調べ、病気の進行度合などを調べることで、病理検査、病理診断と言う場合もあります。病理検査では、採取したがんの組織を顕微鏡で調べて検査します。がん細胞の悪性度はどうなのか、手術で切除した腫瘍の断端に浸潤があるかどうか、リンパ節への転移があるかないか、周辺組織のどこまで広がっているかというようなことが明らかになります。このように、病理検査をしてがん細胞の性質を診断することを病理診断といい、がんの確定診断や、予後の推測、術後の補助療法の決定に欠かせません。
乳がんの場合、手術で切除した乳がん組織と腋窩リンパ節を病理検査で調べます。術中迅速診断と術後に永久組織標本を作って調べます。主な検査項目として、ホルモンレセプター(エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター)が陽性か陰性か、組織的学異型度(核異型度、腺腔形成度、核分裂像)、HER-2が陽性か陰性か、リンパ節転移の有無とその個数、などがあります。 - 部分麻酔 神経に麻酔をかけて、痛みを「伝わらなく」するものです。その種類には、主に「脊椎麻酔(下半身麻酔)」「硬膜外麻酔」「局所麻酔(いわゆる小部分の手術の際の局所の麻酔)」があります。
- 腹直筋皮弁法 乳房を再建する際、自分の腹直筋の一部と腹部の皮膚及び脂肪を使って乳房の膨らみを形成する方法です。腹直筋は、胸の下から縦にお腹を覆う左右一対の筋肉です。その一部を切り離し、その中を通る血管はつないだまま、脂肪と一緒に皮膚の下をトンネル状にくぐらせて胸に移植します。腹部は縦に切る場合と横に切る場合がありますが、最近では傷が下着に隠れるため、横軸型が主流です。主に脂肪で膨らみができるため、柔らかく自然に近い乳房ができますが、健康な部位に傷をつけるという短所があります。腹直筋を切除しても半年経てば日常生活にほとんど支障はありませんが、これから出産を希望する人は避けた方がよい術式です。血管を一旦切り離して移植する遊離皮弁法もあります。
- 分子標的治療 分子標的治療とは、がん細胞増殖に関わる異常なたんぱくや酵素だけに作用する薬を使い、がんを狙い撃ちする治療法のことです。分子レベルでのがん増殖のしくみが研究されてきたことによってできた最新の治療法です。今までの抗がん剤では、がん細胞とともに正常な細胞にもダメージを与えてしまいますが、分子標的治療薬はがん細胞だけに作用するので、副作用が少ないと言われています。乳がんでは、HER-2と呼ばれる特殊なたんぱく質に作用してがん細胞の増殖を止めるハーセプチンという分子標的薬が最近認可されました。ただし、ハーセプチンはHER-2が過剰にあるタイプの乳がんにしか効きません。
- 補助療法 手術と組み合わせて行う治療を補助療法といいます。補助療法には、ホルモン剤を使う内分泌療法と抗がん剤を使う化学療法があります。主に術後に行いますが、ときには、術前に行ってしこりを小さくしてから手術する場合もあります。
- 放射線療法 高いエネルギーの放射線(X線、ガンマ線、電子線など)を使って、がん細胞の成長・増殖を阻止する治療法です。これらの放射線は目に見えず、当たっても痛くも熱くもありません。乳がんでは、がんの切除手術の後、 主に温存療法後に乳房内の再発を防ぐために行います。そのほか、リンパ節転移、骨転移、脳転移、皮膚転移などに対しても行われます。通常、放射線療法は必要な総照射線量を計算し、毎日少しずつ照射していきます。
ま行
- マンモグラフィ(MMG) 乳腺のX線撮影(レントゲン)のことです。乳房を片方ずつ透明の板で挟み、押しつぶした状態で撮影します。縦に挟んだ場合と横に挟んだ場合の2方向から撮影するので、左右で計4回撮影します。圧迫されるため痛みが少しあります。X線撮影なので、若年の場合や妊娠している可能性がある場合は被曝を避けるため、検査を見合わせることもあります。この検査では、乳腺の中のしこりだけではなく、乳がんの初期症状である細かく石灰化したもの(微細石灰化)も写し出すことができます。
- マンモトーム生検 マンモグラフィなどで見つかった小さな病変に対し、吸引装置を用いた専用の針を刺し、組織を採取する乳房専用組織生検システムです。従来はしこりを触れない微細石灰化などの小さな病変の診断は、外科的に切除して検査を行い、小さな病変にも関わらず大きな傷が残りました。マンモトーム生検は局所麻酔をしたのち、太い針を刺したまま、角度を変えて何度でも組織を採取することができ、4ミリほどの縫合の必要のない小さな傷ですみます。
- 麻酔科 手術のときに麻酔をかけること、及び病気・治療に伴う痛みを緩和すること(ペインクリニック)を主な業務とする診療科です。手術のときには、麻酔をかけ、手術が安全に進行するように、患者の様子を管理します。ペインクリニックでは、がん性疼痛等の慢性の痛み等に対して局所麻酔薬を用いた神経ブロックなどにより痛みを緩和させる治療をします。
- 民間療法 民間人の間で発見され、幾世代にもわたって伝承されてきた治療法です。自然食品、機能性食品、カイロプラティック、気功、アロマテラピーなど多種多様なものがありますが、有効性や安全性に関して科学的に証明がなされていないものが少なくありません。経済的にも高額なものになりがちなので、自分にあった賢い利用が必要となります。
- 無再発期間 初回の手術から再発までの期間のことをいいます。臨床試験の結果を検討するときに使われる指標のひとつです。また、再発した場合にはがんの悪性度の指標のひとつにもなります。
- 無作為比較試験 新薬や新しい治療法が本当に効果があるものかどうかを知るには、その新しい治療法と今まで標準的に行われてきた治療法を比べて、どちらが優れているかを見る必要があります。いくつかの治療法を比較してどれがいちばん優れているかを決める方法を比較試験と言います。
比較試験を行うとき、参加者を医師の判断や患者の希望で二つの比べられる治療に振り分けると、たとえば、体力のある患者や、若い患者ばかりが片方に固まるといったことが起きる可能性があります。それでは、新しい治療法の効果を正確に判断することはできません。そこでそのような偏りが起きないように、コンピュータなどを使って機械的に振り分ける方法を、無作為割り付けまたはランダム割り付けといいます。そして、無作為割り付けの方法で実施した臨床試験を無作為比較試験といいます。無作為比較試験のことをくじ引き試験ともいいます。 - 免疫療法 人間は病気に対して自分で治そうとする力、すなわち免疫力を持っています。免疫療法はこの人体の持つ免疫機能を高めて、体内に侵入してきた異物や体内での有害物質などを排除し、身体を正常化しようとするものです。免疫療法と呼ばれるものは幅広く、本人の血液からリンパ球を取り出し、それを体外で活性化して培養後体内に戻す活性リンパ球療法や、キノコなどの食品による免疫療法、生きがいや笑いといった精神的な免疫療法などもあります。しかし、生存率の向上に結びついているかどうかはまだわかっていません。
- 問診(問診表) 医師が患者を初めて診察する時、いつごろからどんな自覚症状があり、その症状がどのようになってきたか、これまでにどんな病気にかかったことがあるか、どんな生活状況か、同じような病気をもつ家族がいないかなどを質問します。これを問診といいます。問診表はこれらの内容を書いた質問用紙です。初めて医師の診察をうける時は患者が問診表に記入してから診察を受けるのが一般的です。乳腺で受診する場合、初潮年齢・妊娠歴・出産歴・閉経年齢も大切な情報となります。
や行
- 予後因子 予後因子は、病気が、術後どのような経過をたどるのかを予測し、見通しを立て、適切な治療方法を選択するための判断材料のことを言います。予後因子には次のようなものがあります。
- しこりの大きさ (小さいほど良好)
- リンパ節への転移状況 (少ないほど良好)
- 遠隔転移の有無(ないほど良好)
- ホルモンレセプター(ER,PgR)の有無 (陽性の方が良好)
- 閉経状況 (閉経前なら化学療法、後なら内分泌療法を行う事が多い)
- 核異型度 (組織学的グレード、または悪性度ともいう・グレードが低いほど良好)
- 葉状腫瘍(葉状嚢胞肉腫) 30代から40代に多く発生し、比較的急速に大きくなるのが特徴ですが、時に巨大化するものもあります。腫瘍の断面が葉っぱのような構造をしているため、この名前がつきました。触診、マンモグラフィー、超音波での所見は良性腫瘍である線維腺腫と似ているため、切除後の病理検査によって診断されることが多いようです。線維腺腫と同様にほとんどは良性ですが、良性-悪性境界例や内臓転移を起こす悪性の症例もあります。悪性であった場合、組織が乳がんとは異なるのでホルモン療法、化学療法、放射線治療はほとんど無効であり、治療の基本は外科的切除です。悪性例や良性-悪性境界例では切除後局所再発の頻度が高いため、広範囲切除が勧められます。
- 陽子線治療 放射線療法のひとつです。陽子線とは、粒子線の一種です。光速の約60%まで加速した水素の原子核(陽子線)を、病変部に照射して行います。
ら行
- リスク因子 乳がんにかかりやすい要素のことです。リスクファクターとも言います。リスクが高いのは、こんな人です。
- 年齢(40歳以上)
- 未婚(30才以上)
- 高齢初産(30歳以上。未産を含む)
- 遅い閉経年齢(55歳以上)
- 肥満(標準体重の+20%以上・特に50歳以上)
- 良性の乳腺の病気にかかった事がある
- 家族に乳がんになった人がいる(母、姉妹、祖母、叔母までに2人以上)
- 乳がんになったことがある
- リニアック 放射線療法に使われる機械のひとつです。リニア加速器、ライナックともいいます。原子より小さい粒子(通常は電子)を直線軌道上で加速し、治療用の高エネルギーのX線や電子線を発生させる装置です。体の外から体内の病巣部を照射して治療します。
- リュープリン LH-RHアゴニスト製剤のひとつ。リュープリンは商品名。
- リンパ液 リンパ液は、血管の外へ染み出した血液中の血漿(けっしょう)という成分やたんぱく質が、全身にはりめぐらされた毛細リンパ管に再吸収されたものです。リンパ液は古くなった細胞や不要となったものをリンパ管を通して運びます。また、リンパ液の中に含まれるリンパ球は、体の中に侵入したウィルスや細菌、変性した細胞などを処理する役目もあります。
- リンパ管再生 手術やリンパ節郭清などでリンパ管が切断されても、バイパスができてリンパの流れは再生されます。切断されたリンパ管が元に戻ることはありませんが、リンパの流れが再生されることから、リンパ管再生と言うことがあります。しかし、完全とは言えないようで、浮腫などの後遺症が残ることがあります。
- リンパ管侵襲 切除したがん組織の中に含まれるリンパ管の中に、がん細胞が入り込んでいることを、リンパ管侵襲といい、がんが周囲組織のどこまで広がっているかを測る指標のひとつです。病理診断の結果では、「ly」がプラスかマイナスか、あるいは0~3の数値で表されます。がん細胞は、その周囲に広がっていくだけでなく、リンパ液や血液に乗って全身に転移する可能性があるわけですが、リンパ管侵襲の有無によって、遠隔転移の可能性を予測する判断材料の一つとなります。ただし、リンパ管侵襲があるからといって、必ずしも遠隔転移しているわけではなく、リンパ節転移も必ずあるとは限りません。
- リンパ節 リンパ節とは、全身にはりめぐらされたリンパ管が所々で集り、関所のような節を作っているところです。豆のような形をしていて、リンパ球を作ったり、リンパ液が運んできた細菌や不純物を濾過するフィルターのような役目もします。体の免疫機能を担う大切な器官で、数は個人差があり一定ではありません。股の付け根の鼠径(そけい)部や、腕の付け根の腋窩(えきか)といった、手足のリンパ管が体幹に入るところに多く集中しています。頭からのリンパ管のために、頸部にも多くリンパ節が集っています。乳がんにおいては、リンパ節へのがんの転移の有無が、リンパ液を通じた遠隔転移を予測する要素となり、補助療法を決める大切な情報となります。
- リンパ節郭清 がんの周囲のリンパ節を取り除くことを言います。リンパ節は直径3~6ミリ程度のもので脂肪組織の中に埋まっていますが、がんが転移していても少量の場合には肉眼で見分けることは困難です。また、リンパ節をつなぐリンパ管には、流れていく途中のがん細胞が存在している可能性があるため、リンパ節を1個1個拾うのではなく、脂肪組織ごと切除してがん細胞を確実に取り切ってしまおうという「郭清」という手段が必要となります。 リンパ節郭清を行ったことによって起こりやすい症状(合併症といいます)として、腕のむくみ(リンパ浮腫)、神経障害によるしびれ感などがあります。
- リンパ節郭清レベル 腋窩(脇の下)リンパ節は、脇の下から鎖骨に向かって以下のようにレベルで表現します。
・レベルI:小胸筋の外側縁より外側
・レベルII:小胸筋の裏側と大・小胸筋の間
・レベルIII:小胸筋の内側縁より内側 鎖骨下のリンパ節
腋窩リンパ節転移の多くは、レベルIからはじまって、レベルII、IIIへと進展していくと考えられています。以前の乳がんの手術では、腋下リンパ節のレベルIからIIIまでまとめて切除する方法が用いられていましたが、切除する範囲が多ければ、腕のむくみなどの後遺症が発生しやすくなるため、現在、浸潤性乳がんにおける標準的な腋窩リンパ郭清は、転移が起こりやすく、また術後の治療方針の決定や術後の経過を予測するうえで十分な情報が得られる、レベルI、IIまでとなっています。 - リンパ節転移 がん細胞は、発生した部位から周囲の組織へ浸潤し、増殖し、リンパ液や血液の流れに乗っていく性質を持っています。リンパ節転移とは、がんがリンパ管を介して転移していくことで、リンパ節が硬く腫れてぐりぐりを作ります。乳がんの場合は、まず、多くは脇の下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移が見られます。乳管の中に発生したがん細胞が大きくなるにつれて、リンパ流に乗ってリンパ節へと移行し、そこに着床してリンパ節転移となります。リンパ節への転移の有無は、乳がんの性質、及びその後の経過を推測するうえで最も重要な情報(予後因子)の1つであり、術後の補助療法を決めるうえでも重要な判断材料となります。
- リンパ浮腫 リンパ節郭清や放射線療法により、リンパ管が切断されてリンパ液の流れが悪くなってしまったために起こる、むくみの症状です。術後、すぐに見られることもあれば、何年かしてから突然生じることもあります。むくみかたも個人差があります。一度リンパ浮腫が起こると、完全に治るのは難しいので、リンパ浮腫が起きないように注意することが大切です。軽減させる方法は、むくんだ腕を高くしたり、マッサージやスリーブ(圧の強い弾力ストッキング)を着用します。
- 粒子線治療 放射線療法のひとつです。粒子線治療とは、陽子や重粒子などの放射線を病変部に照射することによって、主に悪性腫瘍を治す放射線療法の総称です。
従来治療に用いられてきたX線は、体の表面に近い所で最大となり、その後次第に減衰していきます。病変部にある程度の線量を照射しようとすると、X線の通り道となる病変部の手前の組織にはより強い照射がされ、病変部を通り過ぎた向こうにもある程度の線量が照射されることになります。
これに対し粒子線は、一定の深さ以上には進まないよう調整が可能で、且つ、ある深さにおいて最も強く作用させることができるため、周囲の正常組織への影響を押えて病変部のみに効果を集中させることが出来ます。この調整を行うのに研究用の大型の加速器が必要な為、受けられる施設は限られています。 - 臨床試験 新しい治療法(手術方法、新薬や新しい薬の組み合わせなど)が、その病気に対して有効かどうか、安全かどうかを確認する目的で、患者を対象にして治療を兼ねた試験のことを臨床試験と言います。このうち、新薬開発のための臨床試験のことを、特に「治療試験(治験)」と言います。これを行うことで、従来の標準治療と効果の差を比較します。
新しい治療方法の安全性や有効性は確立していないので、臨床試験に参加した患者に必ずしも利益があるとは限りません。ですから、臨床試験に参加するためには、試験内容に関する十分な説明の上での同意を得ること(インフォームド・コンセント)が絶対に必要です。 現在使われている薬や治療法も、これまでの患者の協力によって、 臨床試験を積み上げて得られた結果です。医学の進歩には、不可欠です。
A
- AC 2つの抗がん剤を組み合わせて行う化学療法の名前で、その2つの薬、Adriamycin(アドリアマイシン/アドリアマイシンは一般名ドキソルビシンの別称)とCyclophosphamide(シクロフォスファミド/商品名エンドキサン)の頭文字を取ってこの名前がついています。主に3週間に1回の点滴を4~6コース(クール、サイクルと言うこともあります)行います。
点滴前の採血で白血球の減少などがあった場合にはその日は点滴はせずに、白血球数の回復を待って点滴を行うこともあります。その場合にはAC療法のスケジュールはずれていきます。副作用には吐き気、脱毛、口内炎、白血球減少、貧血、血小板減少、爪の変形・着色、生理不順、肝臓・腎臓・心臓の機能障害などがありますが、副作用の出方には個人差があります。 - AT 2つの抗がん剤を組み合わせて行う化学療法の名前で、その2つの薬、Adriamycin(アドリアマイシン/アドリアマイシンは一般名ドキソルビシンの別称)とタキサン系の薬(Taxol(タキソール)またはTaxotere(タキソテール):いずれも商品名)の頭文字を取ってこの名前がついています。AT療法は主に3週間に1回の点滴を3~6コース(クール、サイクルということもあります。)行います。
点滴前の採血で白血球の減少などがあった場合にはその日は点滴はせずに、白血球数の回復を待って点滴を行うこともあります。その場合にはAT療法のスケジュールはずれていきます。副作用には吐き気、脱毛、口内炎、白血球減少、貧血、血小板減少、しびれ感、筋肉痛、アレルギー、浮腫、肝臓・腎臓・心臓の機能障害などがありますが、副作用の出方には個人差があります。
B
- BCA225 乳がんの腫瘍マーカーの一つで乳がんに対する特異性(乳腺以外でのがんでは異常値を示しにくいこと)が比較的高いマーカーとされています。血液検査の正常範囲は160 U/ml以下です。
C
- CA15-3 乳がんの腫瘍マーカーの一つで、乳がんに対する特異性(乳腺以外のがんでは異常値を示しにくいということ)が比較的高く、CEAとともに乳がんで最もポピュラーなマーカーで、再発の目安とされます。血液検査の正常範囲は27U/ml以下です。
- CAF 3つの抗がん剤を組み合わせて行う化学療法の名前で、その3つの薬、Cyclophosphamide(シクロフォスファミド/商品名エンドキサン)、Adriamycin(アドリアマイシン/アドリアマイシンは一般名ドキソルビシンの別称)、5-FU(ファイブエフユー)の名前の頭文字を取ってこの名前がついています。CAF療法のやり方にはいくつかの方法がありますが、4週間に2回の点滴を6コース(クール、サイクルと言うこともあります)行う場合と3週間に1回の点滴を6コース行うなどがあります。シクロフォスファミドは飲み薬の場合もあります。点滴前の採血で白血球の減少などがあった場合にはその日は点滴はせずに、白血球数の回復を待って点滴を行うこともあります。その場合にはCAF療法のスケジュールはずれていきます。副作用には吐き気、脱毛、口内炎、白血球減少、貧血、血小板減少、爪の変形・着色、生理不順、肝臓・腎臓・心臓の機能障害などがありますが、副作用の出方には個人差があります。
- CEA 乳がんではCA15-3とともに幅広く測定されている腫瘍マーカーですが、他臓器のがん(肺・胃・大腸・膵臓など)でも腫瘍マーカーとして用いられます。また、がん以外(肝疾患や喫煙)でも高値を示すことがあり、異常値の評価には注意が必要です。血液検査の正常範囲は5.0ng/ml以下(検査機関によっては2.5ng/ml以下)です。なお、乳頭分泌がある場合では、分泌物中のCEA測定が行われることもあります。
- CEF 3つの抗がん剤を組み合わせて行う化学療法の名前で、その3つの薬、Cyclophosphamide(シクロフォスファミド/商品名エンドキサン)、Epirubicin(エピルビシン/商品名ファルモルビシン)、5-FU(ファイブエフユー)の頭文字を取ってこの名前がついています。CEF療法のやり方にはいくつかの方法がありますが、4週間に2回の点滴を6コース行う場合と3週間に1回の点滴を6コース(クール、サイクルということもあります)行うなどがあります。シクロフォスファミドは飲み薬の場合もあります。点滴前の採血で白血球の減少などがあった場合にはその日は点滴はせずに、白血球数の回復を待って点滴を行うこともあります。その場合にはCEF療法のスケジュールはずれていきます。副作用には吐き気、脱毛、口内炎、白血球減少、貧血、血小板減少、爪の変形・着色、生理不順、肝臓・腎臓・心臓の機能障害などがありますが、副作用の出方には個人差があります。
- CMF 3つの抗がん剤を組み合わせて行う化学療法の名前で、その3つの薬、Cyclophosphamide(シクロフォスファミド/商品名エンドキサン)、Methotorexate(メソトレキセート)、5-FU(ファイブエフユー)の名前の頭文字を取ってこの名前がついています。乳がんに対する標準的な化学療法のひとつです。主として4週間に2回点滴を行い、それを計6コース(クール、サイクルということもあります)を6ヶ月間行います。3剤とも点滴の場合もありますし、シクロフォスファミドは飲み薬の場合もあります。点滴前の採血で白血球の減少などがあった場合にはその日は点滴はせずに、白血球数の回復を待って点滴を行うこともあります。その場合にはCMF療法のスケジュールはずれていきます。副作用には吐き気、脱毛、口内炎、白血球減少、貧血、血小板減少、下痢、爪の変形・着色、生理不順、肝臓腎臓の機能障害などがありますが、副作用の出方には個人差があります。CMFでの脱毛の度合いは比較的軽く、髪の毛が全部抜けてしまう人はまれです。
- CTスキャン コンピュータ断層撮影と呼ばれる画像診断です。X線を体にあてて、体の輪切りの像を映し出す検査です。造影剤(静脈注射による)を用いるものと用いないものがありますが、通常は同時に2通りの方法で撮影します。検査の間は寝台の上に横になり技師の指示に従います。乳房内の腫瘍の有無やリンパ節への転移状況の観察、肺や肝臓などへの遠隔転移の診断に使用されます。
D
- DCIS 非浸潤性乳管がんのことです。英語での表記ductal carcinoma in situの頭文字をとっています。
E
- EBM EBMとは、evidence-based medicineの略で、「科学的根拠に基づいた医療」と訳されます。医師個人の勘や経験に頼ったあやふやな医療ではなく、臨床試験で得られた結果をもとに、科学的根拠に基いて最適な方法で治療をするために、治療を選択・実践していくことがEBMの考え方です。
H
- HER-2 HER-2はHER-2/neuやc-erbB-2とも呼ばれるがん遺伝子のことです。この遺伝子が活発化している乳がん組織ではある種のたんぱく質(HER-2たんぱく質と呼ばれます)が過剰に産生され、その結果予後が悪くなる(悪性度が高くなる)とされています。HER-2たんぱく質の過剰産生は乳がんの20~30%で認められます。最近、このHER-2たんぱく質の働きを抑える薬剤(商品名ハーセプチン)が開発され、HER-2たんぱく質が過剰に産生されている進行再発乳がんの患者さんの治療に応用されています。
L
- LH-RHアゴニスト製剤 卵巣からエストロゲンが分泌されるのを阻害する薬です。エストロゲンはホルモンレセプターがある乳がん細胞を増殖させる働きがありますが、エストロゲンの分泌そのものを抑えることによって乳がん細胞の増殖を抑制します。卵巣を外科的に切除しても同じような効果が得られますが、最近では卵巣の切除ではなく、LH-RHアゴニストの投与が主流です。
この薬は、卵巣が機能している閉経前の人に処方されます。4週間に1度皮下注射(腹部など)を行います。手術後2年程度行う人が多いですが、投与期間は患者さんによって異なります。商品名には、「ゾラデックス」「リュープリン」があります。
この薬はエストロゲンの分泌を抑えるので、主な副作用は更年期症状です。投与期間中の月経はほぼ完全になくなります。ホットフラッシュ、ほてり、めまい、頭重感などが現れます。気分が鬱状態になる場合もあります。副作用の対処については、個人差がありますので主治医とよく相談してください。
M
- MRI 磁気共鳴検査と呼ばれる画像診断の一種で、細胞の中の水素原子が磁気に反応する原理を利用したものです。CTスキャンのような輪切りの像に加えて、縦切り、斜め切りなど必要に応じて像を写すことができます。放射線の被曝はありません。検査方法は、ガドリニウムという磁性体を注射してうつぶせになり撮影します。乳房内の腫瘍の有無や広がり具合、リンパ節の転移状況を観察し、乳房温存術が適応するかどうかの判断にも使われます。また、転移を調べる際にも利用されます。
N
- NCC-ST-439 乳がんの腫瘍マーカーの一つですが、他臓器のがん(肺・胃・大腸・膵臓など)でも腫瘍マーカーとして用いられます。また、がん以外(肝炎や膵炎など)でも高値になることがあり、異常値の評価には注意が必要となります。血液検査の正常範囲は7.0 U/ml以下です。
P
- PET 陽電子放射断層撮影装置という機械を用いて行う検査です。従来の検査では検出不可能だった直径数ミリの小さながんも発見できることがあります。正常組織の3~8倍のブドウ糖を摂取するがん細胞の性質を利用し、ブドウ糖によく似物質に放射線物質を付着させて体内に入れ、特殊なカメラで撮影します。がんの超早期発見や、転移・進行状態の評価などに威力を発揮する検査ですが、日本でこの検査が行える施設はまだそれほど多くはありません。臨床に使われ始めてまだ間もないこともあり、検査結果の信頼性をあげる努力がなされています。保険が適応できる条件が限られていて、場合によっては高額な検査料金となることがあります。
Q
- QOL QOLとはquality of life(クオリティオブライフ)の略で、通常「生活・生命の質」と訳されます。かつてのがん治療の現場では、がんを完全に治すことが一番の目標とされ、治療の副作用で障害が生じるなどの障害が発生して、患者の生活が不自由になってもあまり気にされませんでした。しかしここ最近、ただ治るだけでなく、生活・生命の質=QOLを保ちつつ最大限の効果が得られる治療法方法を考えることが重視され、後遺症の少ない縮小手術や副作用の少ない薬剤や投与方法の開発が盛んになりました。また、がんの痛みを緩和する方法などの研究が進みました。QOLは肉体的健康面だけでなく、家庭社会面(家庭や職場での人間関係)や精神面からの評価も必要です。